- 「明確な不満はないけど、なんとなくストレス」を感じる人は実は多く、恥ずかしいことではない
- このストレスの正体は「小さな違和感の積み重ね」で、根本原因は「やるべきことを後回しにしている山」にある
- 後回しにした”見えないタスク”が無意識にプレッシャーとなり、「やれてない感」が常に心を圧迫している
- 転職する前に、まずは今の職場で「小さな改善」を自分主導でやってみることが効果的
- Slackでメンションを付ける、ランチに誘う、1on1で貢献を伝えるなど、小さな行動が成功体験となりストレスを軽くする
「パワハラがあるわけでもないし、給料が極端に低いわけでもない。人間関係も致命的に悪いわけじゃない。でも、なんとなく疲れるし、やる気が出ない…」
もしかすると、あなたも似たような状況に心当たりはないでしょうか。明確な不満があるなら対処法も見えてきますが、「なんとなく」のストレスは厄介です。周りに相談しても「贅沢な悩みだ」と言われそうで、自分でも何が問題なのかよくわからない。
そんなモヤモヤを抱えている方に、今回は私の経験をもとに、このストレスの正体と具体的な対処法をお伝えしたいと思います。
「問題がないのに、なぜか疲れる」状態は、実は珍しくない
実は、このような相談は私のもとにもよく寄せられます。表面的には特に大きな問題がないのに、なぜか心が重い。成長している実感がない。やりがいを感じられない。そんな状態で悩んでいる人は、想像以上に多いのです。
実際、厚生労働省が2023年に実施した「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、**現在の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合は82.7%**に上ります。つまり、働く人の8割以上が何らかのストレスを抱えているのが現実なのです。
よくある「明確な問題がない」職場の特徴
- パワハラやセクハラといった深刻な問題はない
- 給料が極端に低いわけではない
- 人間関係も致命的に悪いわけではない
- でも、なぜか疲れる、やる気が出ない
明確な問題があれば対処法も見えてきますが、そうでないからこそ、この種のストレスは解決が難しいのです。
「こんなことで悩んでいる自分がおかしいのかな」と自分を責めてしまう人も少なくありません。しかし、これは決して恥ずかしいことではありません。むしろ、自分の心の状態に敏感に気づけているということは、良いことだと思います。
このような状態に陥る人の多くは、真面目で責任感が強く、周りのことをよく考えている人です。だからこそ、「なんとなく」のストレスを感じ取ってしまうのです。
ストレスの正体は「後回しにしている山」かもしれない
では、この「なんとなく」のストレスの正体は何なのでしょうか。私の経験上、その多くは「小さな違和感の積み重ね」であることがほとんどです。
一つひとつは大したことではないのですが、それが積み重なることで、知らず知らずのうちに心を圧迫していきます。そして、その小さな違和感を詳しく分析していくと、「自分が成長していない」「やりがいを感じない」という不安が根底にあることがわかります。
「後回しの蓄積」が生む悪循環
さらに掘り下げると、この不安の原因は「やるべきことを後回しにしている状態」が続いていることにあると、私は確信しています。
心理学の研究でも、この仮説を裏付ける興味深い結果が出ています。先延ばし後の思考内容と感情の関連を調べた研究(心理学研究, 2009年林潤一郎「先延ばし後の思考内容と感情の関連―先延ばし傾向に着目して)では、先延ばしをよくする人は「自分は駄目だ」「意志の弱い人間だ」などの自己批判によって不安や抑うつ感情を経験することが明らかになっています。
具体的には、こんな状況です。締め切りがあるわけでもないし、誰かに怒られるわけでもない。でも、やらなければいけないことがある。「明日でいいか」「誰かに言われるまではいいか」と、なんとなく後回しにしているタスクが山積みになっていく。
本人も無意識にそれを感じていて、「やれてない感」が常に心に引っかかってストレスになっているのです。
この状態が続くと、目の前に来たものだけを必死に打ち返すような働き方になってしまいます。根本的な「後回しの山」は減らないため、達成感ややりがいを感じることができず、常に「追われている感」がつきまとうのです。
筆者の実体験:「健康診断すら申し込めなかった」ことから気づいたこと
私自身も、この「後回しの蓄積」によるストレスを強く感じた経験があります。
つい最近の話ですが、転職したばかりの会社で健康診断の申し込みをする必要がありました。申し込みをするだけなので、本当に簡単な作業です。5分もあれば終わるでしょう。
しかし、健康診断を受けるクリニックから怒られることもないし、人事から詰められるわけでもない。そのため、「今度やろう」「明日やろう」と、ずーっと後回しにしてしまいました。そして結局、入社から3ヶ月後にやっと申し込みをしたのです。
これは明らかに私の不注意かつ、だらしなさが顕著に表れた例です。しかし、「今日こそはやろう」「今日こそはやろう」が溜まりに溜まって、結果的に大きなストレスになっていました。
仕事でもこんなことがたくさん起きると、やるべきことがあるのはわかっているのに、山積みすぎて手がつけられない。結果として、目の前のことだけを処理する働き方になってしまい、根本的な問題は解決されないままになってしまいます。
締め切りがない、優先度もそれほど高くない、でもやらなければいけないこと。こういうタスクほど、どうしても優先度が下がり、後回しにしがちです。しかし、そのような「見えない山」こそが、私たちの心を静かに圧迫し続けているのです。
「転職=解決」ではなく、まずは今の職場で”小さな改善”をしてみる
このような「なんとなく」のストレスを感じている人の中には、「転職すれば解決するかもしれない」と考える人も多いでしょう。確かに、環境を変えることで改善される場合もあります。
しかし、ストレスの正体がはっきりしないまま転職しても、また同じことが起きる可能性が高いのです。なぜなら、根本的な原因である「後回しにしてしまう癖」や「小さなストレスを見過ごしてしまう習慣」が解決されていないからです。
むしろ、まずは今の職場で「小さな改善」を自分主導でやってみることをお勧めします。小さな変化でも、それが成功体験となり、確実にモヤモヤを軽くしてくれるからです。
例えば、「Slackで報告しても反応がない」という小さなストレスがあるなら、毎回メンションを付ける工夫をしてみる。「雑談の輪に入れない」という悩みがあるなら、自分からランチに誘ってみる。「評価されていない気がする」という不安があるなら、1on1で自分の貢献を軽く伝えてみる。
このような小さな行動一つひとつが、「動いてもいいんだ」「動いたら少し変わった」という前向きな感情を育ててくれます。
小さな行動が、モヤモヤを確実に軽くする
「小さな改善」と聞くと、「そんなことで変わるの?」と思う人もいるかもしれません。しかし、これは非常に効果的な方法です。
具体的な「小さな改善」の例
先ほど挙げた例をもう少し詳しく見てみましょう。
Slackでの報告に反応がない問題 単純に「@○○さん、確認お願いします」とメンションを付けるだけで、反応率は格段に上がります。相手も忙しい中で、たくさんのメッセージを処理しているのです。メンションがあることで、あなたの報告が埋もれにくくなります。
雑談の輪に入りづらい問題 「今度、一緒にランチしませんか?」と声をかけてみる。最初は勇気がいるかもしれませんが、多くの人は誘われることを嫌がりません。むしろ、「声をかけてもらえて嬉しい」と思う人の方が多いでしょう。
評価されていない気がする問題 1on1の場で、「先月は○○の案件でこんな成果を出せました」と、さりげなく自分の貢献を伝えてみる。自分の頑張りは、言わなければ伝わらないことも多いのです。
小さな成功体験が生む好循環
これらの行動に共通しているのは、「自分から動く」ということです。環境や他人が変わるのを待つのではなく、自分ができることから始める。その小さな成功体験が、「動いても怒られない」「動いたら少し変わった」という実感を与えてくれます。
そして、この経験が積み重なることで、「後回しの山」にも少しずつ手をつけられるようになっていきます。小さな行動を起こす習慣がつくと、「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」という状態から、「これは今日やってしまおう」という前向きな姿勢に変わっていくのです。
最後に:「なんとなく疲れている」自分を認めてあげること
明確な不満がないからこそ、誰にも相談しにくい。そんな状況にいる方も多いでしょう。でも、それはあなたが鈍感なわけでも、わがままなわけでもありません。
「なんとなく疲れている」自分をまず認めてあげることから始めましょう。そのうえで、後回しにしていた「ほんのひとつ」に今日だけ手をつけてみてください。
それは、メールの返信かもしれません。デスクの整理かもしれません。同僚への声かけかもしれません。どんなに小さなことでも構いません。
一つでも「やりきった」という経験ができれば、それが次の行動へのエネルギーになります。そして、そのエネルギーが積み重なることで、「なんとなく」のストレスは確実に軽くなっていくはずです。
完璧を目指す必要はありません。まずは、今日できることから始めてみませんか。それが、明日を軽くする第一歩になるはずです。
この記事を読んだ1人でも多くの方が、「なんとなく」のストレスから解放され、もう少し軽やかに働けるようになることを心から願っています。皆さんの職場での悩みが1つでも減れば、筆者冥利に尽きます。最後までお読みいただき、ありがとうございました!