- 風通しの良さはメリットよりもデメリットの方が大きい
- 部下の意見に耳を傾ける文化は言い訳も許容しがちで成長を妨げる
- 上下関係が曖昧になると評価者が不在になり、評価に対しての不満が出やすい
- 過度な共有は、スタッフの間で全く意図とは違う理解をされて弊害になりやすい
- 風通しの良い環境の本質は、目標を達成できる環境や権限の要求を上司に対してできること
「風通しの良い職場で働きたい」「社長とも腹を割って話せるようになってほしい」
この記事に訪れてくれた方はこんな思いで仕事をしておりませんか?
確かに、多くの人が開かれたコミュニケーション、意見の自由な交換、そして柔軟な働き方ができる環境は魅力的であり、特に革新を求めるベンチャー企業やクリエイティブな業界では重宝されます。
実際にこの記事を書く筆者は100名程度の会社で実際に社長と話せる機会が多く、風通しの良い職場で働くメリットは非常に感じています。
ただ、一概に風通しの良い職場が良いのか?というと疑問です。
むしろ組織が大きくなればなるほど風通しの良さは弊害にしかなりません。
今日は筆者の実体験を下に、この「風通しの良さ」が必ずしも万能の解決策ではないということを書いていきたいと思います。
風通しの良さが持つリスク
メリットばかり注目される職場の風通しの良さですが、風通しが良いがゆえに生まれるデメリットについて解説をしていきます。
言い訳を許容し成長を妨げる
風通しの良い職場では、従業員が自由に意見を交換できるため、結果が出ない、失敗してしまった等のネガティブな話題にも耳を傾ける文化があります。
ネガティブなこともしっかり共有される文化は非常に良いのですが、結果がでない理由、失敗した背景、など総じて言い訳が許容されがちな風習が形成されやすいです。
仕事で求められることは与えられた役割を全うすることであり、失敗をしてしまった理由に対して上司が耳を傾けることではありません。
「結果を元に次達成させるためにはいつまでに何をやるか?」「達成のために足りないリソースはなにか?(足りないから達成のために提供してほしい)」
などを部下側から持ってきて結果にコミットしながら本来は進めていくべきなのです。
相談だったり、失敗した理由を親身になって聞いてくれる環境(風通しの良さ?)は、その瞬間瞬間は気持ちいいと思います。
ただ、後々の成長を考えた時に、
- 風通しがよく、上司ができない理由(言い訳)をいっぱい聞いてくれる環境
- 言い訳は聞いてくれず、次のアクションを求め続けられる環境
あなたはどちらが成長できる環境だと思いますか?
絶対的に後者だと思います。テキストに落とし込むと非常に冷たい印象に見えますが、過去の変えられないことをダラダラ振り返りより、未来のアクションを変える会話の方が建設的でしょう。
評価の曖昧になり不満が出る
上記で説明をした言い訳する環境ができやすいという話しにもつながるのですが、意見が言いやすい環境は上司と部下の間の階層を曖昧にすることがあるゆえ、個人の評価に対しても影響を及ぼす恐れがあります。
本来、部下を評価するのは直属の上司ただ一人で、そのフィードバックを元に経営層が最終的な処遇を決めるものです。
しかし、この上司と部下の関係が曖昧になってしまうと、本来評価者である直属の上司と、本来評価される側の一般スタッフが同列になってしまい、評価者が明確でなくなり評価プロセスに不透明性が生じてしまいます。
一番近くで見てきた直属の上司ではなく少し離れた経営層が判断をすることで、
「本当に自分の働きぶりを見て評価してくれているのか?」
「評価の基準が曖昧でわかりづらい(細かいフィードバックもない)」
「社長に気に入られたもんがちじゃないか?」
なんて不信感が生まれがちです。風通しが良いとしっかり評価をしてもらえるイメージですが真逆です。
複数人のベンチャー企業なら社長が全て見えるのでイメージ通りかもしれませんが、50人100人それ以上となると、まず風通しが良いからと言って適切な評価が得られると思うことはやめてください。
あなたが社長や経営層になったことを想像してほしいのですが、100人全員の業務が見えますか?適切な評価をする自信がありますか?まず難しいでしょう。
現場の直属の上司を配置し、しっかり上下関係と作った上で報告をあげてもらうことが遠い上で一番適切に評価をする手段の1つなのです。
実例)評価者がいなくなりスピードが落ちた
これは筆者の職場で起きた事例なのですが、直属の上司が部下を評価するシステムから「風通しの良さ」が推進されて経営陣が一般スタッフ層1人1人を評価するような体制変更がありました。
経営層も1人1人に向き合ってちゃんと評価をしたいがために面談を行なったり、説明をしたり誠実な対応をしたので従業員の満足度は最初は高かったです。
ただ、いざ蓋を開けてみると現場における評価者が不在なので、細かい自分の役割やゴールをスタッフ人が見失い、「これをやっていて評価されるのか?」と不安を感じながら仕事をしてスピードが圧倒的に落ちる事例がありました。
現場にいつもいる課長、ないしは部長レベルの人が嫌われようと、「週次の目標はこれ」「水曜日までに制作を終わらせてほしい!」などなど、短期的なゴール設定がないことには、なかなか難しいものです。
オンオフの区別がなくなる
職場の雰囲気が学生サークルのようになりがちなのも風通しの良い環境の一つの副作用です。これは、仕事とプライベートの境界があいまいになり、結果として仕事の効率が低下する可能性も示唆します。
職場が仲良いに越したことはありませんが、プライベートと混同させることはトラブルが起きる可能性を大きくしているようなものです。
筆者の実体験でもありますし周囲からも聞くことですが、
- 男女間の問題が発生しやすい
- お酒の席での、いわゆるアルハラ行為
- プライベートが尊重されない
などなど。
学生のサークルであれば全てが思い出の1つとして後々振り返れば笑い話になるでしょうが、仕事に置き換えれるといかがでしょうか?
男女間のトラブルや関係が多くある職場は健全ですか?社員は家族だから〜と言ってプライベートの時間が尊重されず飲み会などがたくさんあって業績は上がるのでしょうか?
お酒が好きな人からしたら良い環境かもしれませんが、飲まない人だっているでしょうし、お酒が強い弱いで社内のヒエラルキーが決まっても仕事の実力には一切関係がありません。
風通しの良さは、時に仲の良さと混同され、その結果オンオフの境界線が曖昧になることがあります。会社にとっても、個人の成長をとっても、オンオフがない学生のサークルのようなノリの職場は以下がないものでしょうか?
大規模組織での適用の難しさ
少数精鋭のベンチャー企業では、風通しの良さが自然と生まれ、この環境が迅速な意思決定や革新を促します。
しかし、従業員数が100人を超える大規模な組織では、全員の意見を同等に扱うことが現実的ではなく、結局のところ意思決定が遅れたり方向性が不明確になるリスクがあります。
みんなが意見する会議、みんなが経営方針に対して意見できる環境。聞こえは良いですし、いろんな可能性が生まれてワクワクすることでしょう。すごく大切です。
でも残念ながら、みんなが意見を出しあっても何も生まれません。ワンマンの会社でも右向け右で1つのビジョンに対してすぐに行動に移せる組織がやっぱり強いです。
他者がじっくり社員の声に耳を傾けて戦略を練っている間に、失敗を重ねてでも5個10個アウトプットをする組織です。前者はPDCAのP止まり、後者はPDCAを高速で回している。この違いです。
孫さんから言われたことは3日以内にやる
ソフトバンクの孫さんの有名な話しで3日ルールというものがあります。
何かを始める際にその価値や実行可能性を判断するために自らに与える3日間の期限と一般的に言われますが、孫さんに言われたことは3日以内に必ず実施しなくてはいけないというルールも該当します。
風通しがよくみんなで意見を言う組織が良いふうに見えますが、ソフトバンクのような大きい会社でもトップが言ったことをすぐやる。言ったことをすぐやる。の行動の元に日本を代表する企業にまでなっているわけです。
あくまで一例に過ぎませんが、経営や戦略にみんな口を出せて協議ができる組織と、1匹の狼の指示に従って協議もなく一気に動ける組織。自分が経営者になった時にどちらが強いかを考えるとおもしろいと思います!
【実体験】風通しの良さの弊害
上記の文章内でも実体験の実例を少し出しつつ説明をしていきましたが他にも具体的な例があるので補足をさせてください。
不安を煽る例)事業売却=業績悪化?
筆者が勤める会社の一部事業を売却しようなんて話しが上がりました。風通しが良いあまり従業員にもその話しが行き渡ります。
さすがに風通しが良いと言っても事業売却等は規模も大きい話しで、1人1人に社長が説明するのは無理があるため、役職者にまず共有がされました。役職者は理解をしスタッフ層にも全体の動きとして共有をします。
しかし何が起こったかと言うと伝言ゲームに失敗をしてしまい、
「会社の業績がやばいから会社が売られる」「人も切られる(リストラ)のではないか?」
なんて根もない話しが回って退職を考えるスタッフが出てきたほどです。役職者に共有されただけなのにです。
事例だけみると社長の説明不足だったり、役職者の理解不足だと思いますが、伝言ゲームなんてそんなものですし、事業売却の真意なんて経営に携わったことのないスタッフからしたら説明を受けても100%理解できなくて当たり前だと思います。
話せばわかると思いがちですが、経営者と従業員では視点だったり背負っているリスクが全く違うので同等にはどんなに頑張ってもならないものです。
風通しが良いからなんでも共有してほしい!なんでも共有すべき!は、上記の事例のように会社にとってマイナスになることも多々あるのです。
実例)社外のトラブルを社内に持ち込む
風通しの良さが推奨されたタイミングから社内の飲み会だったり、交流というものが活発になりました。
今まで話せなかった役職の人と話せたり、社内で仲の良いグループがいくつかできたり非常に和気藹々の雰囲気に最初はなりました。
ただ、その仲良しグループが飲み会の際に働き方について口論になり、それを職場に持ち込み対象者がパワハラを理由に辞めるなんて事例が起こりました。
お酒に酔った勢いで不備を指摘、お酒に酔った勢いで反発。というプライベート上でのトラブルを社内に持ち込み、口も効かなかったり仕事の連携も極力避けるという最悪な関係です。
風通しの良さ、プライベートも仲良しは理想ではあるのです。でもやっぱり仕事から離れると気が緩み、気が緩んだ時にトラブルが起きがちです。仕事の関係者ですから、そのトラブルは仕事にも影響がでがちです。
会社からしたら社外の管轄街のトラブルで本当に迷惑な話しですし、筆者の実例では退職者も出ているので本人たちにとっても何も得がありません。
風通しが良いの本質
上記では風通しが良いのデメリット、そして否定じみた文章をこれでもか!と書いてきましたがいかがだったでしょうか?
前述した通り筆者の職場も風通しが良い分類に入るので、風通しの良さのメリットはいくらでもあります。ただ同じくらいかそれ以上にデメリットも存在するので今回記事化させていただきました。
結論から話すべきところ、最後に結論という形で恐縮ですが、風通しの良い環境とは
- 与えられた目標に対しての権限が上司から与えられている
→例えば1000万の目標を達成するために100万の決済権が与えられている等 - 達成のために必要な権限を上司に求めることができる
→今持つ権限で達成が難しい場合、広告費の追加や人的リソースの手配の権限を要求できる環境
みんなが意見を言えることではなく、この2つこそ風通しの良い環境のあるべき姿だと思います。
何度も文の中に「風通しの良い環境」という言葉を登場させてますが、この記事をきっかけに風通しさの良さとは?とこの記事を訪れてくれた方が考えるきっかけになれば筆者冥利につきます。
今の職場環境に対して、そして転職をする際に見る求人に書かれているこの言葉に対してもです。
長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました!