- 提案が通らない原因は上司の理解不足ではなく、提案の仕方に問題がある可能性が高い
- 上司は「どれだけ伸びるか」より「最悪失敗した時の損失」を重視している
- 松竹梅の「梅」、さらにその下の最悪ケースまで数値化して提示することで承認率が上がる
- 「1円も売上が上がらなかった場合の損失は◯◯円」と最大損失を明確にすることが重要
- 最悪ケースの提示は承認を得やすくなるだけでなく、自分の頭の整理にもなる
- 心はポジティブに、頭は冷静に最悪のパターンまで考える両立が成功の鍵
「せっかく良い提案をしているのに、上司が承認してくれない」「やりたいことをやらせてもらえない」
こんな悩みを抱えながら、日々モヤモヤしていませんか?自分では完璧だと思った企画が却下され、「上司が時代遅れだから」「理解力がないから」と不満を募らせている方も多いでしょう。
しかし、はっきり言います。提案が通らない原因の大半は、あなたの提案の仕方に問題があるのです。
筆者は32歳の会社員ですが、役員でもないのに社長直談判で新会社を立ち上げたり、広告費の大幅増額を承認してもらったり、提案がほぼ通る経験をしてきました。その秘訣は「松竹梅、そして最悪のケースまで正直に提示する」ことです。
この記事では、管理職として提案を受ける側でもあり、上層部に提案する側でもある筆者だからこそわかる、提案を通すための具体的な方法をお伝えします。
向上心のあるあなたなら、必ず実践できるはずです!
役員でもない会社員が、なぜ提案を通せるのか
私は32歳の会社員で、役員ではありませんが大手ベンチャーで役職についています。そんな立場ですが、実は社内提案が通るケースが非常に多いのです。
具体的な例を挙げましょう。以前100人程度の会社に勤めていた時、私は社長に直接交渉して、学生と一緒に新会社を立ち上げ、立ち上げ時の支援を受けることができました。広告費の大幅な増額提案も通りました。また、あまり大きな声では言えませんが、パフォーマンスの低い社員に退職してもらうという人事的な提案も承認されました。
これらは特に目立つ例ですが、他にも数え切れないほどの提案を通してきました。現在は数千人規模の会社に勤めていますが、ここでも「提案したことはだいたいやってみろとなる」という状況です。だからこそ、「やりたいことをやらせてもらえない」という感覚をほとんど持ったことがありません。
提案が通る理由:松竹梅と最悪のケースを提示しているから
なぜ私の提案は通るのか。その答えはシンプルです。
松竹梅、そして考えられる最悪のケースまで正直に提示しているからです。
私は管理職として提案を受ける側でもあり、同時に上層部に提案する側でもあります。両方の立場を経験しているからこそ、通る提案と通らない提案の違いが手に取るようにわかります。
多くの人が犯している致命的なミスは、希望的観測に基づいた「薔薇色のシナリオ」しか提示しないことです。「この施策を実行すれば、売上が◯◯%伸びます」「市場規模は◯億円で、そのうち◯%を獲得できます」といった、成功した場合の試算だけを並べ立てる。
しかし、上司――特に上層部にいけばいくほど――が見ている視点は全く異なります。
上司が本当に見ているもの:可能性ではなくリスク
上司が最も重視しているのは、「どれだけ伸びる可能性があるのか」ではありません。**「最悪失敗した時に、どれだけの損失が出るのか」**という視点なのです。
これを聞いて「伸びしろや可能性を見るべきでは?」と思う方もいるでしょう。その気持ちは理解できます。しかし、冷静に考えてください。物事が想定通りに進む確率は、限りなく低いのです。それが新規事業となれば、なおさらです。
もしすべてが試算通りに進むなら、誰もがビジネスで成功しているはずです。アントニオ猪木の名言「やる前から負けること考える馬鹿いるかよ」も大切ですが、それは「やる」と決まってからの心構えです。「やると決まるまでの判断」では、どうしても厳しい目で見る必要があるのです。
これは上司があなたの提案をやらせたくないのではありません。逆です。**成功させたいからこそ、慎重に判断しているのです。**そして、承認を出した上司にも少なからず責任が生じるという事情もあります。
私自身が上司の立場で承認を出す際も、同じ視点で判断しています。
最悪のケースを数値化せよ:具体的な提案方法
では、どのように提案すれば良いのか。ここからが本題です。
上司にとって救いになるのは、「うまくいく」という試算よりも、「うまくいかなかった場合」の試算です。松竹梅で言えば「梅」、いや、梅のさらに下のケースまで提示すべきです。
具体的には、こう伝えるのです。
「最悪の場合、1円も売上が上がらなかったとしても、広告費や開発費の損失はこれだけです。私が稼働した時間を人件費に換算すると、だいたい◯◯万円の損失になります。つまり、最大損失は◯◯万円です」
1円も売上が上がらないケースは、考えられる中で最低の試算でしょう。もちろん、必ずしもゼロ円のパターンである必要はありませんが、このレベルまで落とし込んで数値化することが重要です。
特に新規事業レベルの提案になると、「失うものが大きい」というイメージだけが先行しがちです。だからこそ、失うものの最大値を明確に言語化しておくのです。
すると、上司は次のように判断できます。
「最悪これくらいの損失なら、今の事業で出ている利益で十分賄えるな。やってみてもいいよ」 「スモールスタートで、まずは◯◯の範囲からやってみるか」
このように、承認へのハードルが大幅に下がるのです。
最悪のケース提示がもたらす2つのメリット
この方法には、承認を得やすくなる以外にも大きなメリットがあります。それは、自分の頭の整理になるということです。
自分がやりたいことを考える時、どうしても希望的観測が入り混じり、ポジティブな提案ばかりが頭に浮かびます。調子が良い時はそれでも構いません。しかし、事業というものは、ずっとノリノリで進められるものではありません。必ず悪いタイミングが訪れます。
だからこそ、最初の段階から頭の整理をしながら、ノリノリでいかない最悪のパターンまで想定しておく。これができると、実行段階での判断の質が格段に上がります。
想定していなかった問題が起きた時、多くの人はパニックになります。しかし、最悪のケースまで事前に考えていれば、「想定の範囲内だ」と冷静に対処できるのです。
成功する人のマインドセット
ここまで読んで、「最悪のケースばかり考えていたら、ネガティブにならないか?」と思う方もいるかもしれません。
安心してください。大切なのは、心は常にポジティブに、でも頭では悪いパターンも考えて冷静でいることです。
心の中では「絶対に成功させる」「この提案は素晴らしい」というポジティブな情熱を持ち続けてください。それがなければ、困難を乗り越えることはできません。
しかし同時に、頭の中では冷静に最悪のシナリオまで計算し、リスクを正確に把握しておく。この両立ができる人こそが、提案を通し、実際に成果を出せる人材なのです。
提案が通る人、通らない人の決定的な違い
提案が通らない人は、こう言います。 「この施策で売上が倍になります!市場はこんなに大きいんです!」
提案が通る人は、こう言います。 「この施策で売上が倍になる可能性があります。ただし、最悪の場合、◯◯万円の損失が出ます。現在の利益状況を考えると、この損失は十分カバー可能な範囲です。一方、成功した場合のリターンは◯◯万円で、リスクリターン比は1:10です」
この違い、おわかりいただけるでしょうか。
後者の提案は、上司が判断に必要な情報をすべて提供しています。リスクとリターンを天秤にかけ、合理的な判断ができる材料が揃っているのです。
注意すべき前提条件
最後に一つ、重要な注意点をお伝えします。
この方法を使えば、どんな提案でも通るわけではありません。会社の方向性や事業内容にそぐわない提案は、どれだけリスク分析をしても通りません。
例えば、不動産会社に勤めているのにアパレル事業を始めたいとか、美容師なのに飲食業も手がけたいといった、明らかに本業と離れた提案は難しいでしょう。
あくまでこの方法が有効なのは、会社の事業領域や戦略方向性と整合性がある提案です。その前提の上で、リスクを明確にし、最悪のケースまで提示することで、承認の可能性を大きく高めることができるのです。
まとめ:やりたいことを実現するために
社内で提案を通し、やりたいことを実現したいなら、希望的観測に基づいた薔薇色の未来を語るだけでは不十分です。
松竹梅の「梅」、いや、それ以下の最悪のケースまで正直に提示してください。損失の最大値を明確に数値化し、上司が判断しやすい材料を揃えるのです。
これは上司への配慮だけでなく、あなた自身の思考整理にもなります。心はポジティブに、頭は冷静に。このバランスを保ちながら提案できれば、あなたのやりたいことが実現する可能性は飛躍的に高まるでしょう。
向上心のあるあなたなら、きっと実践できるはずです。次の提案から、ぜひ試してみてください。
この記事を読んだ1人でも多くの方が、社内提案を通すことができ、やりたいことを実現し、仕事の悩みが1つでも減れば筆者冥利に尽きます。最後まで見ていただき、ありがとうございました!
