- 上司の厳しさは、あなたが上司のニーズを正確に把握できていない可能性がある
- デザイナーが過度に作り込んだり、エンジニアが正式見積もりに時間をかけすぎるなど、求められているレベル感とのズレが原因のことが多い
- 「自分にだけ厳しい」は主観的なものか構造的な問題かを分析する必要がある
- 中間管理職なら組織上当然の立場であり、一般社員でも他の同僚が「言っても響かない」タイプなら、あなたに集中投資している可能性がある
- 実は期待の表れや信用の裏返しで、成長の見込みがある人材だからこそ時間をかけて育成されている
- 被害者意識ではなく当事者意識を持って、上司との対話を増やし建設的に状況改善を図ることが重要
職場で「なぜ自分にだけ厳しいのか」と感じる経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。同じようなミスをしても自分だけが注意され、他の同僚には寛容に見える上司。そんな状況に直面すると、理不尽さを感じてしまうのも無理はありません。
しかし、パワハラのような明らかな問題行動を除けば、実はその厳しさの裏には構造的な理由や、意外な期待が隠れている可能性があります。私自身も大手ベンチャーで役職者として働く中で、様々な角度からこの問題を見てきました。今回は「自分にだけ厳しい上司」の真意を読み解き、その状況を成長の機会に変える対処法をお伝えします。
上司のニーズを正確に把握できているか
期待以上は期待ハズレ?よくある勘違いパターン
まず考えるべきは、あなたが本当に上司のニーズに応えられているかどうかです。どんなに能力が高くても、上司が求めるものとずれていては評価されません。
例えば、デザイナーとして高いスキルと実績を持っていても、上司から「バナーのテキストだけ変えてほしい」「背景の色だけ変えてほしい」と依頼されたときに、時間をかけて全体の構成まで大幅にアップデートしてしまうケースがあります。これは一見、期待以上の働きをしたように感じるかもしれませんが、実際は「そこまで求めていない」というのが上司の本音だったりします。
上司が本当に求めていたのは、細かい修正よりも「依頼からアウトプットまでのスピード」だったのです。完璧を求めすぎて納期が遅れるより、70点のクオリティでも素早く対応してくれる方が、業務全体の流れを考えると価値が高い場合が多いのです。
システム開発現場での「概算」と「正式見積もり」の違い
システム開発の現場でも同様のことが起こります。「この案件、工数どれくらいかかる?」と聞かれたとき、「工数見積りますね」と言って数日後にエンジニアを集めてミーティングを開き、その上で正式な見積もりを出すのは確かに丁寧で正しい業務フローに見えます。
しかし、上司が求めていたのは「ぱっと要件を伺った感じの概算ですが、3ヶ月もあればできるかなという所感です。ただ、正式にエンジニアを集めて検討しないと細かい工数まではわからないので、あくまで概算で上振れ下振れは全然あります」といった即座の回答だったりするのです。
指示待ち人間から脱却する意識改革
「最初から言ってくれよ!」と思うかもしれませんが、上司のニーズや求めている役割、回答というのは自分から取りに行かないといけないという意識を持つことが重要です。指示待ち人間ほど、ただの指示出しの相手で終わってしまい、自分で自分の首を締めることになります。そういう意味でも、上司のニーズを積極的に引き出し、それに応えることが職場の人間関係改善の第一歩だと私は考えています。
「自分にだけ厳しい」は主観か構造的問題か
中間管理職なら当然?組織構造による必然性
次に整理すべきは、その厳しさが主観的なものなのか、それとも構造的な問題なのかという点です。
例えば、あなたが中間管理職など、上司と唯一レポートライン上でつながる立場であれば、ある程度悪いことは悪いと言われてしまうのは構造上致し方ない場合があります。「直接メンバーに言ってよ」と思うかもしれませんが、直接部長や課長、小さい会社であれば社長や役員が末端の社員に向けて指示を出していたら、中間管理職の存在が必要なくなってしまいます。つまり、あなたが橋渡し役として機能することが組織として期待されているのです。
同僚との比較で見えてくる真実
一般の会社員であっても、あなたにだけ厳しい場合は一度引いた立場で状況を見る必要があります。例えば、同じ立場の人が3人いて、あなたにだけ厳しいとしたら、他の2人はどのような人なのでしょうか。もし他の2人が「ワークライフバランスばかり意識して、仕事は二の次、定時に帰れればいい」というタイプの人であれば、言っても響かない可能性が高いのです。だからこそ、上司はあなたに集中しているのだと理解する必要があります。
確かに、仕事は二の次の人が怒られないのは理不尽に感じるかもしれません。しかし、未来思考で考えれば、キャリアにおいてはあなたの方がチャンスがあり、上がれる土俵にいるというメリットも見出せます。上司は限られた時間の中で、投資対効果の高い部下に時間を割くものです。成長の見込みがない人に時間をかけるより、伸びしろのある人材に集中投資する方が組織全体にとってプラスになるからです。
期待の表れと信用の裏返し
筆者の実体験:「巻き込まれる」ことの真の意味
実は「自分にだけ厳しい」状況は、期待の表れや信用の裏返しだったりすることも重々あります。
私自身もまさにそんな立場にいます。怒られるまではいきませんが、いろんな部署から仕事の依頼や相談、勉強会の実施依頼などがものすごく来ています。側から見れば「仕事を頼みやすい人」「いろんなところに巻き込まれて可哀想」といった見方をされているかもしれません。実際、私自身もそう思うことがあります。
しかし、通販の仕事をする中で、営業から開発、デザイン、マーケティング、物流まで、一連の流れを経験してきて、だいたいのことは理解できるようになりました。だからこそ「こいつを巻き込んでおけば、形になる」という信頼の裏返しとして、様々な依頼が来るのです。
「バランス型人材」の希少価値
メンバーを見ても、確かに飛び抜けたスキルを持っていて尊敬できる同僚はもちろんいますし、大好きです。しかし、このようなバランス型の人材は他にいないなと感じます。だから自分にばかり依頼が来るのだろうと理解しています。
そう考えると、確かに目の前は忙しくて嫌になることもありますが、頼られているし信頼されていると捉えることも可能で、やりがいを感じられるのです。上司があなたに厳しいのも、同じような理由かもしれません。他の同僚では対応できない複雑な案件や、重要な判断が必要な業務を任されているからこそ、より高い基準で評価されているのです。
厳しさを成長の機会に変える対処法
では、具体的にどのようにしてこの状況を成長の機会に変えていけばよいのでしょうか。
まずは上司との対話を増やすことです。定期的な1on1の時間を設けて、期待値の擦り合わせを行いましょう。「どのような成果を期待されているのか」「どの部分で改善が必要なのか」「今後どのようなスキルを身につければよいのか」といった点を明確にすることが重要です。
次に、フィードバックを積極的に求める姿勢を示しましょう。厳しい指摘を受けたときも、感情的にならずに「具体的にどのように改善すればよいでしょうか」と建設的な対話に持ち込むことです。
また、自分自身の成長を可視化することも大切です。定期的に自分の業務成果や学習内容を整理し、上司に報告することで、成長していることを客観的に示せます。
さらに、同僚との関係性も見直してみましょう。他の同僚がどのような評価を受けているのか、どのような業務を担当しているのかを客観的に分析することで、自分の立ち位置が明確になります。
最後に
「自分にだけ厳しい上司」という状況は、確かにストレスを感じるものです。しかし、その背景には組織の構造的な要因や、あなたへの期待が隠れている可能性があります。
パワハラのような明らかな問題行動は論外ですが、多くの場合、その厳しさは成長の機会として捉えることができます。上司のニーズを正確に把握し、自分の立ち位置を客観的に分析し、建設的な対話を重ねることで、この状況を自分のキャリアにとってプラスに変えていくことができるのです。
重要なのは、被害者意識を持つのではなく、当事者意識を持って積極的に状況を改善していく姿勢です。今の厳しさが将来のあなたの成長と成功につながることを信じて、前向きに取り組んでいきましょう。
この記事を読んだ1人でも多くの方が、「自分にだけ厳しい上司」という状況を新しい視点で捉え直し、成長の機会として活用できるようになることを願っています。職場での人間関係の悩みが1つでも減れば、筆者冥利に尽きます。最後まで見ていただき、ありがとうございました!