- メリハリがない組織への不満は正当であり、「会社員なんてそんなもん」という諦めの言葉に耳を貸す必要はない
- 筆者の前職では、ワンマン社長引退後に組織が崩壊し、会議が愚痴大会になり、遅刻や長時間のタバコ休憩が横行するなど規律が完全に失われた
- メリハリがない組織でも、仕組みで改善可能:①会議の報告フォーマット固定化、②週次報告の徹底、③タスク管理と進捗確認、④結論ファーストの文化づくり
- 役職がなくても一人から始められる改革であり、ピリッとした緊張感を持つ人が一人いるだけで組織の雰囲気は必ず変わる
メリハリがない組織で働いていると、日々の仕事に対するモチベーションが削がれていく感覚を覚えることがあります。友達感覚のような馴れ合いの会話で物事が決まらない、失敗しても誰も責任を取らない、ヒリヒリとした緊張感がまったくない。そんな環境では、自分自身のやる気まで奪われてしまいそうになるのも無理はありません。
「会社員なんてそんなもんだよ」「給料もらえて安定してればいいじゃない」
こういったアドバイスをしてくる人もいるでしょう。しかし、断言します。
そんな言葉は間に受ける必要はありません。会社員だからといって、メリハリのない仕事を受け入れる必要などないのです。実際にバリバリと成果を出しながら働いている人はたくさんいます。私自身、32歳で大手ベンチャーの役職者として、メリハリのある環境で日々仕事に取り組んでいます。
今あなたが感じている不満を捨てる必要はありません。むしろ、その不満を原動力に変えて、少なくとも自分の周りだけでもメリハリのある組織に変えていくことこそが、あなたが取るべき正解の行動なのです。
メリハリがない組織の実態:ワンマン社長引退後に崩壊した組織
私の前職は、もともと非常にメリハリのある会社でした。社長のワンマン経営で、社長自身が最強のプレイヤーであり、誰よりも厳しい存在でした。「ワンマン経営」と聞くとネガティブなイメージを持つ方も多いかもしれませんが、実際は違いました。評価軸が社長という圧倒的な存在に一本化されていたため、むしろ仕事はやりやすかったのです。社長自身がプレイヤーとして現場まで降りてきてくれたので、相当厳しい環境ではありましたが、その分成長も早く、やりがいもありました。
しかし、この社長が引退し、経営体制が変わってから状況は一変しました。驚くほどメリハリのない社員が増えていったのです。
あるチームの会議は、ただ会社の愚痴を言い合うだけの時間に成り下がりました。「どうせ新社長に言ってもわからないから、できるだけ報告せずに勝手にやってしまおう」といった無責任な発言が飛び交うようになりました。組織は見る見るうちに崩壊していきました。
今まで厳格だった規律は完全に緩み、遅刻をしてくる社員が現れ、タバコ休憩が異様に長い社員が目立つようになりました。それまで「さん付け」で呼び合うのが当たり前だった職場で、友達のようなあだ名で呼び合う光景が日常化しました。とにかく、あらゆる面でメリハリが失われていったのです。
メリハリがない組織の根本的な問題とは
メリハリがない組織には、いくつかの共通した特徴があります。
まず、危機感の欠如です。自分が目標を達成しているのか、いないのかがわからない状態で、ただ時間が過ぎるのを待っているような仕事の仕方になります。評価基準が曖昧で、成果を出しても出さなくても大差がないという雰囲気が蔓延しています。
次に、決断力の欠如です。誰も責任を取りたがらず、すべてが「みんなで決めよう」という名目の下、結局何も決まらない会議が繰り返されます。自責ベースでの仕事ができておらず、常に他人任せの姿勢が目立ちます。
さらに、プロフェッショナリズムの欠如も深刻です。仕事とプライベートの境界線が曖昧になり、職場が単なる仲良しクラブのようになってしまいます。これでは、本来の仕事の目的である価値創造や成果創出が二の次になってしまいます。
実践的解決策1:会議の報告フォーマットを徹底的に固める
こんな総崩れの環境で、私が最初に実践したのは、仕組みでメリハリを作ることでした。一つ一つ注意していてはキリがありません。システマティックに改善していく必要があったのです。
まず取り組んだのが、会議の報告フォーマットの固定化です。
会議で話が脱線するのは、そもそも脱線する隙間があるからです。雑談になる余地があるから、メリハリがなくなるのです。であれば、最初から会議の報告フォーマットをがっちりと決めて、全員がその通りに話すようにすればいいのです。
具体的には、以下のような構成にしました:
- 現状の数値報告(売上、進捗率、KPIなど)
- 先週からの変化点(改善点、悪化点)
- 今週の重点施策(具体的なアクション3つまで)
- 課題と相談事項(判断が必要な事項のみ)
重要なのは、基本的に部下から上長への報告をメインとし、上長はベラベラと話さないことです。上長の役割は、報告を聞いて判断することであり、長々と持論を展開することではありません。
もしあなたが役職についていない場合でも、同じアプローチが可能です。上長に対して「話が脱線しがちなので、このようなフォーマットでの報告でよろしいでしょうか?」と提案してみてください。少なくともあなただけは、その報告フォーマットを完全に守って、きっちりと報告することです。
たった一人でもピリッとした緊張感を持って仕事をしている人がいれば、必ず組織の雰囲気が変わるタイミングが訪れます。
実践的解決策2:週次報告・月次報告を必須化する
次に取り組んだのが、週次報告と月次報告の徹底です。
メリハリがないということは、つまり危機感がないということです。自分が目標を達成しているのか、いないのかがわからないがゆえに、ただ時間が過ぎるのを待っているような仕事になってしまうのです。
そこで重要なのが、自分自身の未達度や評価への意識を持つタイミングを強制的に作ることです。「自分は目標を達成していない」「このままだと評価されない」という現実を直視する機会を定期的に設けるのです。
週次ベースでの報告となると、もう逃げがききません。月次ベースだと少しもっさりしてしまいますが、週次だと直近の数値や数字が未達だった場合、次回の報告までに何としても達成しようという強い動機が生まれます。報告の場が気まずくならないよう、徹底的にタスクをこなすようになるのです。
週次報告で報告すべき内容は以下の通りです:
- 今週の目標と実績(数値ベースで明確に)
- 達成率とその要因分析
- 来週の目標設定
- 目標達成のための具体的アクション
もしあなたが一般社員の立場であれば、まず自分だけでも始めてみてください。週次で自分の進捗を可視化し、未達であっても達成に向けてタスクをこなしている姿を見せること、毎週きちんと約束を守って実行していく姿を見せることが重要です。
メリハリがない組織にも、あなたと同じように「本当はもっと仕事を頑張りたい」と思っている人は必ずいます。あなたの行動を見て、少しずつ仲間が増えていくはずです。
実践的解決策3:タスク管理と進捗確認を仕組み化する
週次報告と連動して重要なのが、タスク管理の徹底です。
週次報告の際に、必ず「今週やるべきタスク」を明確に書き出してもらいます。そして次の週に、その進捗状況を確認します。もし終わっていなければ、なぜ終わらなかったのかを聞きます。
ここで重要なのは、詰めたり怒ったりすることではありません。シンプルに「何があったから終わらなかったのか?」「他に優先順位の高いタスクが発生したのか?」といったコミュニケーションを取ることです。
タスク管理で意識すべきポイントは以下の通りです:
- タスクの粒度を適切に設定する(1週間で完了可能な大きさに分解)
- 優先順位を明確にする(重要度と緊急度のマトリクスで整理)
- 完了基準を明確にする(何をもって完了とするか事前に定義)
- 振り返りを必ず行う(できなかった理由を分析し、改善策を考える)
目標の達成は、本人の努力や会社の状況によってどうにもならないこともあります。だからこそ、「今週やると約束したタスクを必ずやる」という小さな約束の積み重ねが非常に重要になってくるのです。
この習慣が定着すると、組織全体に「約束は守るもの」という文化が醸成されていきます。
実践的解決策4:質問ではなく結論を持ってくる文化を作る
メリハリがない組織は、決断ができなかったり、自責ベースでの仕事ができていない傾向があります。だからこそ、最後に重要なのが**「結論ファースト」の文化**を作ることです。
議題や協議する内容がある場合、当事者は「議題」を持ってくるのではなく、「結論」を持ってくるようにします。その結論に対して議論をすればいいのです。
具体的には、以下のような形式で提案してもらいます:
「〇〇の件について、私の結論は△△です。理由は3つあります。1つ目は…、2つ目は…、3つ目は…。懸念点としては□□がありますが、××で対応可能と考えています。ご意見をお聞かせください。」
このアプローチのメリットは複数あります:
- 思考力が鍛えられる(自分で考え抜く習慣がつく)
- 議論が効率的になる(論点が明確になる)
- 責任感が醸成される(自分の意見を持つことで当事者意識が生まれる)
- 決断が早くなる(選択肢が明確になるため判断しやすい)
結論を持ってくる習慣は、メリハリを生むだけでなく、ビジネスパーソンとして必須のスキルも同時に身につけることができます。自分では決められず、上司の言うことだけが自分の意見になってしまうような人材では、いつまでたっても成長できません。
実践する上での心構え:一人でも変化は起こせる
これらの施策を実践する上で、最も重要なのは「一人でも変化は起こせる」という信念を持つことです。
組織全体を一気に変えることは難しいかもしれません。しかし、まずは自分の半径5メートルから変えていけばいいのです。自分が変われば、周りの人も少しずつ影響を受けます。その輪が広がっていけば、やがて組織全体が変わっていくのです。
特に重要なのは以下の3点です:
- 批判するだけでなく、自ら実践する
- 小さな成功体験を積み重ねる
- 仲間を見つけて巻き込んでいく
メリハリがない組織に不満を持っているあなたは、決して間違っていません。その不満こそが、より良い組織を作るための第一歩なのです。
まとめ:メリハリのある組織は自分で作れる
メリハリがない組織で働くことは、確かにストレスフルです。しかし、だからといって諦める必要はありません。今回紹介した4つの実践的アプローチを一つずつ実行していけば、必ず変化は起こります。
- 会議の報告フォーマットを固定化する
- 週次報告・月次報告を徹底する
- タスク管理と進捗確認を仕組み化する
- 結論ファーストの文化を作る
これらは決して難しいことではありません。今日からでも、あなた一人からでも始められることばかりです。
「会社員なんてそんなもん」という諦めの言葉に耳を貸す必要はありません。メリハリのある仕事をして何が悪いのでしょうか。向上心を持って、プロフェッショナルとして仕事に取り組むことは、当然の権利です。
最後に、もう一度強調したいことがあります。変化を起こすのに、役職は必要ありません。一般社員であっても、派遣社員であっても、アルバイトであっても、自分の仕事に対する姿勢を変えることで、周りに影響を与えることができます。
メリハリのある組織で働きたいという願望は、決してわがままではありません。それは、プロフェッショナルとして当然の欲求です。今の環境に不満があるなら、文句を言うだけでなく、自ら行動を起こしてください。
あなたの小さな一歩が、組織全体を変える大きな一歩になるはずです。
この記事を読んだ一人でも多くの方が、メリハリのない組織で感じているモヤモヤや不満から解放され、自ら環境を変えていく勇気を持っていただければ幸いです。そして、実際に行動を起こすことで、仕事に対する悩みが一つでも減れば筆者冥利に尽きます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!