- 期待値調整とは「できること・できないこと」を明確に伝え、相手の勝手な期待を防ぐこと
- システムリプレイスなどのプロジェクトで、目的を伝えずに不満を聞くと期待が勝手に膨らむ
- 政治や経済ニュースでも同様に「自分には関係ない話」を「自分も恩恵を受ける」と勘違いする人は多い
- 期待値調整ができないと、普通に良い成果を出しても「期待外れ」と評価されてしまう
- リーダーや管理職は、プロジェクト開始前に必ず「できる範囲・できない範囲」を明示すべき
「頑張ってプロジェクトを進めたのに、なぜか周りの評価が低い…」「メンバーが不満を漏らしているけど、何が悪かったんだろう」
こんな経験はありませんか?特にリーダーや管理職として仕事を推進する立場にいる方なら、一度は直面したことがある悩みではないでしょうか。
実は、この問題の根本原因は「期待値調整」ができていないことにあります。
筆者が現在勤めている会社で、まさにこの問題が起きています。システムのリプレイスプロジェクトを進めているのですが、目的は基盤の刷新なのに「デザインも新しくなる」「使いにくかった部分が改善される」と勝手に期待値が膨らんでしまったのです。
結果として、きちんと目的を達成しても「期待していたものと違う」という不満が生まれてしまう。これは、期待値調整を怠った典型的な失敗例です。
本記事では、仕事で成果を出すために絶対に必要な「期待値調整」の重要性と、その具体的な方法について解説します。
期待値調整とは何か?なぜ必要なのか
期待値調整とは、できることとできないことを明確に伝え、相手が勝手に期待を膨らませないようにすることです。
ビジネスの現場では、この期待値調整ができていないせいで、本来評価されるべき成果が「期待外れ」として受け取られてしまうケースが非常に多いのです。
例えば、あなたが営業担当として新規顧客を獲得したとします。普通に考えれば素晴らしい成果ですよね。しかし、もし上司が「今月は10社獲得できると期待していた」と思っていたら、5社獲得しても「思ったより少ないな」と評価されてしまうのです。
これは上司の勝手な期待?いいえ、違います。期待値調整をしなかったあなたにも責任があります。
「今月は5社を目標に動きます」と事前に伝えておけば、5社獲得した時点で「目標達成、素晴らしい」と評価されるはずです。同じ成果でも、期待値次第で評価が180度変わるのです。
実体験:システムリプレイスで起きた期待値のズレ
筆者が現在勤めている会社では、通販システムのリプレイスプロジェクトを進めています。レガシーなシステムを今風の基盤に変えるというプロジェクトです。
このプロジェクトの本来の目的は以下の通りでした。
・システムの基盤を最新化して、今後の開発スピードを向上させる ・サーバーコストを削減する ・セキュリティを強化し、情報漏洩のリスクを減らす
つまり、裏側の仕組みを改善するプロジェクトだったわけです。
しかし、プロジェクトが始まると、多くのメンバーから「ここのデザインも新しくなるんですよね?」「今まで使いにくかった管理画面も改善されるんですよね?」という質問が次々と飛んできました。
誰もそんなことは言っていないのに、勝手に期待が膨らんでいたのです。
これは、プロジェクトの目的を明確に伝えず、「困っていることはありませんか?」と不満ばかり聞いてしまったことが原因でした。不満を聞けば聞くほど、「これを言えば解決してくれるんだ」と相手は期待してしまいます。
結果として、システムリプレイスが完了しても「思っていたのと違う」という不満が残ることになるのです。
政治・経済ニュースでも起きる「勝手な期待」
期待値のズレは、ビジネスの現場だけでなく、日常のあらゆる場面で起きています。
例えば、政治家が「国民の年収を上げます」と発言したとします。すると多くの人が「自分の年収も上がるんだ」と期待しますよね。
しかし、政治家が年収を上げるわけではありません。年収を上げるのは企業であり、あなた自身の能力です。
さらに言えば、政府の政策で影響を受けるのは、主に政府の手が届く大企業だけです。中小企業やベンチャー企業で働いている人には、ほとんど影響がありません。
同様に、「今年の夏のボーナスは過去最高」というニュースが流れたとします。すると「自分もボーナスが増えるかも」と期待する人がいますが、実際には自分の会社は例年通り、あるいは減額されているケースも多いでしょう。
これも勝手な期待です。ニュースはあくまで「平均値」の話であり、あなた個人の話ではないのです。
期待値調整ができないとどうなるか
期待値調整ができないと、以下のような問題が発生します。
1. 良い成果を出しても評価されない
先ほどの営業の例と同じです。相手の期待値が高すぎると、どれだけ頑張っても「期待外れ」として受け取られてしまいます。
例えば、ボーナスを例年通り支給しても、「今年は景気が良いから多めにもらえると思っていた」と期待していた社員からすれば「少ない」と感じてしまうのです。
企業側は何も悪いことをしていないのに、不満を持たれてしまう。これが期待値調整の失敗です。
2. 信頼を失う
期待値のズレが続くと、「この人の言うことは信用できない」と思われてしまいます。
「今回のプロジェクトで業務が楽になります」と言っておきながら、実際には何も変わらなければ、次のプロジェクトでは誰も協力してくれなくなるでしょう。
3. プロジェクトが炎上する
期待値調整ができていないと、プロジェクトの途中で「こんなはずじゃなかった」という声が噴出します。そして、軌道修正を余儀なくされ、スケジュールが遅延し、最悪の場合はプロジェクトが頓挫します。
全ては、最初に期待値調整をしなかったことが原因です。
期待値調整の具体的な方法
では、どうすれば期待値調整ができるのでしょうか。具体的な方法を解説します。
1. 目的を明確に伝える
プロジェクトを始める前に、「何のためにやるのか」を明確に伝えましょう。
筆者のシステムリプレイスの例で言えば、以下のように伝えるべきでした。
「今回のプロジェクトの目的は、システム基盤の刷新です。これにより、今後の開発スピードが速くなり、サーバーコストが削減され、セキュリティが強化されます。ただし、皆さんが普段使う管理画面のデザインや、お客様が見るサイトのデザインは変わりません。裏側の仕組みを変えるプロジェクトなので、正直、皆さんが実感できる変化は少ないかもしれません」
このようにできることとできないことを明確に伝えることが重要です。
2. 不満を聞く前に、範囲を区切る
「困っていることはありませんか?」と聞くのは悪いことではありません。しかし、範囲を区切らずに聞くと、相手は「何でも叶えてくれる」と期待してしまいます。
まずは「今回のプロジェクトで対応できる範囲」を明示してから、その範囲内での不満や要望を聞くようにしましょう。
3. 過度な期待を抑える
「このプロジェクトが成功すれば、業務が劇的に改善します!」といった過度な表現は避けましょう。
現実的に達成できる範囲を、控えめに伝えることが大切です。
そうすることで、達成した時に「期待以上だった」と評価されます。これが、期待値調整の本質です。
4. 定期的に進捗と範囲を確認する
プロジェクトが進む中で、メンバーの期待値が勝手に膨らんでいないか、定期的に確認しましょう。
「今回のプロジェクトでは、デザインの変更は予定していませんが、そのあたりは理解いただいていますか?」といった形で、認識のズレを早期に修正することが重要です。
リーダー・管理職こそ期待値調整を徹底すべき
期待値調整は、すべてのビジネスパーソンに必要なスキルですが、特にリーダーや管理職にとっては必須のスキルです。
なぜなら、リーダーは多くの人を巻き込んでプロジェクトを進める立場だからです。メンバーの期待値がバラバラだと、プロジェクトは確実に失敗します。
「優しく接したい」「期待を持たせてモチベーションを上げたい」と思う気持ちはわかります。しかし、現実と異なる期待を持たせることは、優しさではなく無責任です。
むしろ、「今回はここまでしかできません」とはっきり伝えることが、真の優しさであり、メンバーへの誠実さだと筆者は考えています。
**厳しいことを言うのが優しさ。**これは筆者が常に意識していることです。
期待値調整も同じです。相手にとって耳が痛いことでも、はっきり伝える。それがリーダーの役割です。
まとめ:期待値調整は信頼の土台
期待値調整は、一見地味なスキルに思えるかもしれません。しかし、信頼関係の土台となる、極めて重要なスキルです。
- できることとできないことを明確に伝える
- 目的を最初に共有する
- 不満を聞く前に範囲を区切る
- 過度な期待を抑える
これらを徹底することで、あなたの仕事の評価は確実に上がります。そして、メンバーからの信頼も得られるでしょう。
逆に、期待値調整ができないと、どれだけ頑張っても「期待外れ」と言われ、信頼を失い、プロジェクトが炎上します。
この記事を読んだ1人でも多くの方が、期待値調整の重要性に気づき、明日からの仕事で実践していただければ幸いです。そして、無用な摩擦や不満を減らし、より良い成果を出せるようになることを願っています。
仕事における悩みが1つでも減れば筆者冥利に尽きます。最後まで見ていただき、ありがとうございました!
