- 「手に職をつければ安泰」という考え方は、会社員には当てはまらない幻想である
- 会社が本当に評価するのは、専門性の深さより「どこでも60点を出せる汎用性」
- 専門性を追求しすぎると「優秀なプレイヤー止まり」で、管理職への道が閉ざされる
- 出世を決めるのは知識の深さではなく「視野の広さ=横幅」である
- 筆者自身、様々な領域に広く浅く関わったことで部長職に到達できた実体験がある
「手に職をつければ安泰だ」「専門性を磨いて市場価値を上げよう」
こんな言葉を信じて、特定のスキルを磨くことに必死になっていませんか? 確かに専門性は大切ですし、スキルアップすること自体は悪いことではありません。
しかし、会社員として出世を目指すなら、この考え方は少しズレています。
筆者自身、マーケティングや企画を得意としながらも、デザイン、開発、営業、経理、組織課題など、様々な領域に関わってきました。そして現在は部長職として会社を動かす立場にいます。振り返ると、専門性を追求するよりも「広く浅く、いろんなことに関わってきた経験」こそが、今のポジションに繋がったと確信しています。
会社が本当に求めているのは、特定分野のスペシャリストではなく「どこでもそれなりに回せる人」です。この記事では、なぜ専門性の追求が出世の壁になるのか、そして会社員として本当に磨くべき力は何なのかについて、実体験を交えながら解説します。
「自分のスキルを磨いているのに、なぜか評価されない」と感じている方にこそ読んでいただきたい内容です。
「手に職」という幻想
「手に職をつければ、一生食っていける」
昔からよく言われるこの言葉を、今も信じている人は多いでしょう。しかし、会社員という生き方の中で、この考え方は少しズレています。
医師や職人のように、スキルそのものが収入になる仕事なら、確かに「手に職」は正しい戦略です。個人の専門性がそのまま市場価値になり、独立しても食べていける力になります。
けれどサラリーマンの世界では、個人のスキルはあくまで「組織の一部」として機能するものです。会社の商材、仕組み、チームの連携があってこそ、そのスキルが活きるのです。
だからこそ「自分のスキル一本で食っていく」という考え方は、会社員にとっては幻想に近いと言えます。あなたのスキルは、会社という器があって初めて価値を発揮するものなのです。
会社における「専門性」の限界
どれだけ特定の分野を極めても、組織の中では結局「歯車の一つ」です。
部署が変われば求められる役割も変わりますし、事業が転換すればスキルの価値も揺らぎます。つまり会社という構造の中では、専門性を磨くほど適応力が下がるという矛盾が生まれるのです。
「自分の得意領域だけをやりたい」「この分野に集中したい」
そんな思いは間違いではありません。むしろ、職人気質で素晴らしいことだと思います。
でも、そのスタンスを貫くほど、組織の中での評価軸からは外れていくのが現実です。会社は「この分野だけしかできません」という人よりも、「色々なことをそれなりにこなせます」という人を重宝します。
なぜなら、会社組織は常に変化し続けるものだからです。事業戦略が変われば、求められる役割も変わる。そんな時、柔軟に対応できる人材こそが、組織にとって価値が高いのです。
会社が評価するのは「どこでも60点を出せる人」
ここで、厳しい現実をお伝えします。
会社が本当に求めているのは、「どこでもそれなりに回せる人」です。異動しても、プロジェクトが変わっても、最低限の成果を出せる人。120点の専門家より、どこでも60点を出せる人の方が、扱いやすくて昇格させやすいのです。
なぜなら、管理職は特定の業務のプロではなく、「チームを動かす人」だからです。
「どこでも通用する人」は、どこに配置しても困りません。営業部門に行っても、マーケティング部門に行っても、事業企画に行っても、それなりの成果を出せる。その「汎用性」こそ、会社から見たときの出世の条件になっているのです。
一部に秀でている人は確かに魅力的だが、優秀なプレイヤーにすぎない
特定分野で圧倒的な成果を出す人は、確かに魅力的です。その人がいるだけでチームの成果が何倍にもなる。そんな存在は間違いなく貴重です。
しかし残念ながら、多くの会社ではプレイヤー層と管理職(マネージャー)に分けられ、プレイヤーの中で特段偉い役職があるところは少ないのが現実です。
その中で出世や昇給を考えるなら、やはりプレイヤーから抜け出さないといけない時が必ず来ます。どれだけ優秀なプレイヤーでも、プレイヤーのままでは給与の天井は見えています。
会社の構造上、大きく年収を上げたいなら、マネジメント側に回るしかないのです。
専門性を追いすぎる人がぶつかる「天井」
スキルにこだわる人ほど、ある壁にぶつかります。
「自分の専門外はやりたくない」「上司が自分の専門性を理解してくれない」
こう言い始めた瞬間、キャリアの伸びしろは止まります。
スキルを磨いているつもりが、いつの間にか「組織の中で動かしづらい人」になっていく。その結果、どれだけ成果を出しても「プレイヤー止まり」で終わることが多いのです。
本人の努力とは裏腹に、出世の道は閉ざされていく。これは本当にもったいないことだと思います。
なぜなら、その人が持っている能力自体は高いのに、視野が狭くなってしまったがために、組織から「使いづらい」と判断されてしまうからです。
出世=「横幅」の広さで決まる
ここまで読んで、「じゃあ何を磨けばいいんだ」と思った方もいるでしょう。
答えはシンプルです。出世を決めるのは、知識の深さではなく「横幅」です。
事業を理解し、人を動かし、組織を回す。そのためには、自分の専門領域以外にも目を向ける必要があります。
営業も、マーケティングも、バックオフィスも。それぞれの立場のロジックを理解できる人ほど、上に立てるのです。
会社は「分野の専門家」ではなく、「全体を見渡せる調整者」を求めています。つまり、「知識の横幅を広げた人」だけが到達できる領域なのです。
専門性は100点でも、視野が狭ければ60点の評価。視野が広ければ、専門性が70点でも100点の評価になる。それが会社組織の現実です。
「手に職」ではなく「手に”視野”を持て」
サラリーマンに必要なのは、技術よりも「視野」です。
一つの分野に閉じこもるより、複数の領域を横断しながら、どんな現場でも結果を出せる柔軟さを持つこと。それが本当の意味で「どこでも通用する力」なのです。
手に職を持つのではなく、手に視野を持て。これが、会社員として生き残り、そして出世するための一番強いスキルだと筆者は確信しています。
筆者の経験談
最後になりますが、筆者の実体験を書かせていただきます。
筆者もこうやって文章を書いたり、広告や企画を通じてモノや体験を売るのが得意という自負があります。しかし、それは会社の役割の中の一部に過ぎません。
デザインのディレクションや開発のディレクション、時には営業を担ったり、経理と会話しつつ予算を決めたり、組織課題について議論したり。いろんなところに呼ばれますし、携わる機会が多いです。
今や部長職になったから当たり前なのかもしれませんが、前職、そして今の会社に入ってからも、とにかくいろんなことをやってきました。専門性と言われれば低いのかもしれません。
ただ、とにかくいろんなことに関わると、広く浅い知識はつきます。
筆者はデザイナー職とはかけ離れているところにいますが、広く浅く関わったことで、デザインのディレクションや開発のディレクションも、なぜかできてしまうのです。
これは、「対デザイナー」への向き合いではなく、「対事業」というものがあり、その中にデザイナーという構図が理解できるからです。
どの役割も組織の中の一つであり、一部門だけのプレイヤーを優遇することはまずありません。とにかく、事業の方向性の中でデザインのディレクションをしているという軸さえぶれなければ良いですし、組織にとっても有益なのです。
逆に、デザイナー出身者でデザイナーとして優秀であれば優秀なほど、視点がデザインに寄ってしまい、「組織の中の役割である」ことから離れてしまいます。
だからこそ、意外に管理職というのは専門スキルではなく、視野の広さや横幅で決まりますし、務まると実体験から思っています。
まとめ
サラリーマンとして出世を目指すなら、専門性の深さよりも視野の広さを磨くべきです。
「手に職」という考え方は、会社員にとっては必ずしも正解ではありません。むしろ、いろんなことに触れて、広い知識や経験を持つ人の方が、組織の中では重宝されます。
もちろん、専門性を磨くこと自体が悪いわけではありません。ただ、それだけに固執してしまうと、キャリアの天井が見えてくるのも事実です。
この記事を読んだ1人でも多くの方が、「専門性を磨くだけでは足りない。視野を広げることも大切なんだ」と気づいていただき、キャリアの悩みが1つでも減れば、筆者冥利に尽きます。
最後まで見ていただき、ありがとうございました!
