- いくら結果が出ていても、人材の代替えがいるか?いないかは会社が判断すること
- 残酷な事実だが、結果を出しているあなたが異動になっても、その穴は誰かが埋めるのが組織であり仕組み
- 個人の希望ばかりが通ってしまう会社だと事業が成り立たないから与えられた役割を全うするべき
- 異動によって役割が変わったり経験が増えることはキャリアの面で見ればプラスにしかならない
「今のポジションで結果を出しているのに異動を命じられて納得ができない」「他に適任者がいるのに、なぜ自分が異動?」「プレイヤーでバリバリやいたいのにマネジメント側に異動?」
今まさにこんな悩みを抱えていませんか?今のポジションで結果が出ていれば出ているほど、異動や役割が変わることを会社から通達をされ納得ができない人も多いでしょう。これは全くおかしな感情ではなく当然だと思います。
実際に筆者も、プレイヤーとしてバリバリ活躍していて賞与査定なども最高評価を会社からもらっていたのに急に異動になったことがあります。
会社のM&Aや離職などが重なり空いたポジションに異動という形で役割は広がったのですが、元のポジションが天職くらいのつもりでやっていたので納得するのに時間がかかりました。
ただ、実際に異動してみてキャリアの幅が広がったり、異動して経営層と近くなったことで会社側の考えや仕組みについて知れる良い機会になったのも事実です。
そんな経験者だからこそ言える、会社の仕組みやキャリアにとってはポジティブという面について、今日は詳しく書いていきます。
結果の重みを判断するのは会社
結果を出しているにもかかわらず異動を命じられる社員の心情と、その状況をどう理解すべきかについて説明しています。
まず、社員の立場からすれば、良い結果を出しているのに異動させられることへの不満や疑問を感じるのは当然です。自分の異動が会社にとってマイナスになるのではないか、なぜ結果を出していない他の人ではなく自分が異動しなければならないのかという感情が湧くことは理解できます。
しかし、重要なポイントは、その結果の価値や重要度を判断する権限は会社にあるということです。これはサッカーの得点を例に説明できます。ワールドカップの常連国から取った1点と、ワールドカップに出場できないような国から取った1点では、その重みは全く異なります。前者の方が明らかに価値が高く、評価も異なってきます。
同様に、会社には様々な部署やチームが存在し、社員が明らかな成果を上げていたとしても、その結果が会社にとってどれだけの重要度や価値があるのかを判断するのは会社の役割です。これは必ずしもその社員の実績を軽視しているわけではありません。
その人材を異動させても良い領域なのか、あるいは絶対に動かせない重要なポジションなのか、その判断は会社が行うものです。会社にとって大きな損失となる可能性がある場合や、その人でなければ務まらないポジションかどうかの判断も、すべて会社が行います。
このような基準や前提を理解しておくことが重要です。
スターがいなくなればスターは現れる
「スターがいなくなればスターは現れる」という章では組織における人材の入れ替わりと、その後の自然な成長過程について説明しています。
現在結果を出している人の前にも同様に結果を出していた人がいたはずです。そして興味深いことに、誰かが抜けた後には、必ず誰かがその穴を埋めていくものです。これは特に、会社の歴史が長ければ長いほど顕著に見られる傾向です。
たとえばサッカー界では、FCバルセロナでメッシが退団した後に若手のペドリやガヴィが台頭しチームの新たな核として成長しました。バスケットボールでも、歴史上でも伝説と言われるようなマイケル・ジョーダンが引退した後、新たなスター選手が現れチームは違った形で進化を遂げています。
確かに、どの時代にも仕事ができる人とそうでない人、活躍する人としない人は存在してきました。しかし、組織は転職者により人が辞めたり、逆に中途採用、新卒採用を通じて人が入ってきたり人材の入れ替わりを繰り返しています。
その中で適材適所に人材が配置され、様々な担当が変遷しながらも組織は継続的に運営され業績を向上させています。
実際に成功している会社ではこのような仕組みが確立されているため、結果を出している人が変わっても、新たに結果を出す人材が現れその役割を引き継いでいきます。これは必然的な流れといえます。
興味深いことに、最初は仕事ができなくても、役割を与えられることで徐々に成長していく人もいます。また、一人では補えない場合でも、チームメンバーが少しずつ力を合わせて補っていくこともあります。
したがって、自分がいなくなることで会社が大きな損失を被るということは実際には滅多にありません。確かに直後や数ヶ月は影響があるかもしれませんが、1年程度経過すれば元の状態に戻っているのが組織の一般的な姿だといえます。
自分の希望は会社の希望とは限らない
この記事を読んでいる人の多くは、良い結果を出しているにもかかわらず異動を命じられ、納得できない状況にあると考えられます。現在のポジションで継続して働きたいという希望を持っているはずです。
しかし、会社組織には増収増益を目指すとともに、社員や関係者、取引先を守る責任があります。そのため、個人の希望だけを優先していては、会社は成り立ちません。
もちろん、異動を希望しない場合は、その意思を会社に伝えることは重要です。会社側がその希望に応えてくれるのであれば、それに越したことはありません。
ただし、重要な点は、社員は会社に雇用されている立場であり、現在の担当業務を永続的に続ける権利があるわけではないということです。その時々で与えられた役割を全うすることは大切ですが、異動は新しい役割が与えられることを意味します。
つまり、これまで与えられた役割が社員としての全てを定義するわけではありません。あくまでも会社組織の一員として、異なる役割を任されることがあるのです。
したがって、自分の希望が全て叶うわけではなく、会社の希望と個人の希望が必ずしも一致しないということを理解する必要があります。これは組織で働く上での基本的な前提といえます。
次のステージまで見る
多くの場合、優秀なプレイヤーは結果を出しているからこそ、現状の立場で継続して頑張りたいと考えるものです。しかし、異動によって役割が変わり、マネジメント業務が増えたり一歩引いた立場を任されることが多くなります。
確かに、プレイヤーとしての実績を積み重ねることは重要でその能力は貴重な財産となります。プレイヤーとしての実績は、ないよりもあった方が確実に価値があります。
ただし、スポーツ選手を例に考えてみると、どんなに優れた選手でも全盛期は10年もありません。超トッププレイヤーとして活躍できる期間は実際には数年程度です。
これは年齢や精神面の要因もあり、会社においても入社から退職まで常にトッププレイヤーとして貢献し続けられる保証はありません。
そのためプレイヤーとして優秀な人材ほど、次のステージとして他のプレイヤーを育成・管理する立場に移行する必要が出てきます。プレイヤーとしては物足りなく感じるかもしれませんが、重要な違いがあります。
プレイヤーではなく活かす立場の威力
自分がプレイヤーとしての活躍は「1」ですが、マネージャーとして5人の部下を持つことで、その影響力は5倍になる可能性があります。
つまり、自分一人の努力で生み出せる成果に比べ、部下たちの力を合わせることで、より大きな成果を上げられる可能性があるのです。もちろん、プレイヤーとして直接的に貢献できる数字への感度は低くなるかもしれません。
しかし、5人の部下がそれぞれ成果を上げることで、最終的には自分一人の時よりも大きな数字として積み上がっていくことになります。
年齢とともにプレイヤーとしての能力は自然と低下していきますが、マネジメント能力を身につけることで、むしろ会社への貢献度を高められる可能性があります。
市場価値の向上
実際の転職市場では、20代後半から30代に入ると、マネジメント経験の有無が重要な評価対象となります。
さらに、相当な専門職でない限り一つの分野に特化するよりも、様々なスキルをバランスよく持っている方が会社組織では重宝されます。
たとえば10段階評価で一つの分野が突出しているよりも、複数の分野で5程度の能力がある方が実務では使いやすく、転職市場でも評価されやすい傾向があります。
したがって、異動によって現在の業務から離れることに抵抗を感じるかもしれませんが、これを自身のキャリアステージを上げるための重要な機会として捉え、前向きに取り組むことが大切です。
次のステージに向けた成長の機会として、この変化を受け止めていく姿勢が求められるでしょう。