- 上司がスキル不足で無能だと感じているなら、そもそも「戦っている土俵が違う」ことを理解すべき
- 会社が求めているのは120点のプロ仕事ではなく、60点でも推進力があり会社全体を見られる人材
- 実際に業界未経験者が統括部長になった事例もあり、上に行くほど求められるスキルセットは全く異なる
- プレイヤーと管理職・役員は「日本と中国の食事マナー」くらい違うフィールドで戦っている
- 上司のスキルを批判する前に、まずは上司に求められている「役割」を理解することが重要
「上司のスキルが低すぎて仕事にならない」「自分の方が圧倒的にできるのに、なぜあの人が上司なのか理解できない」
こんな悩みを抱えながら日々働いていませんか?自分よりもスキルが劣る上司の下で働くことは、モチベーションを削がれる辛い状況ですよね。
しかし、その悩み自体が実は「間違った視点」から生まれているかもしれません。
筆者の会社でも、業界未経験者が事業統括部長になったことがあります。最初は「何も知らないのに務まるのか?」と思いましたが、実際に働いてみて気付いたのです。上司とプレイヤーでは、そもそも戦っているフィールドが全く違うということに。
この記事では、上司のスキル不足に悩むあなたに向けて、なぜその悩みが的外れなのか、そして本当に理解すべきことは何なのかを解説していきます。
この記事を読めば「上司のスキルがどうとか、そもそも気にする必要がなかった」と視点が変わるはずです!
上司のスキル不足に悩む会社員は驚くほど多い
「上司が使えない」「自分の方が仕事ができる」こういった不満を持つ会社員は本当に多いです。特に、専門職として高いスキルを持っている方ほど、この悩みに直面しやすい傾向があります。
デザイナーとして優れたセンスと技術を持っているのに、上司は古いデザインしか作れない。エンジニアとして最新技術を駆使できるのに、上司は基礎的なコードすら理解していない。営業として圧倒的な成果を出しているのに、上司は数字も取れていない。
こんな状況では「なぜこの人が上司なんだ?」と疑問に思うのは当然です。しかし、ここで立ち止まって考えて欲しいのです。本当に上司は「スキル不足」なのでしょうか?
上司には「あなたにないスキル」が必ずある
結論から言います。上司にはあなたにないスキルが必ずあります。そして、そのポジションにいるということは、あなたが思っている「スキル」が求められていないケースが非常に多いのです。
だからこそ、スキルがない=無能という図式はまず成り立ちません。
ここで多くの人が勘違いしているのが「スキル」の定義です。あなたが考えているスキルと、会社が管理職に求めているスキルは、全く別物だと考えてください。
例えば、あなたがデザイナーだとしましょう。あなたは120点のプロフェッショナルな仕事ができるかもしれません。しかし、会社が上司に求めているのは、120点のデザインスキルではないのです。
会社が求めているのは120点ではなく、60点の推進力
では会社は何を求めているのか?それは、60点でもいいから圧倒的な生産性と推進力です。
外注デザイナーであれば、細かく指示を出せば120点の仕事をしてくれるかもしれません。しかし、社内の人間に求められるのはそこではありません。
会社の売上のこと、ブランドのこと、他部署との連携のこと。こういった全体像を最初から理解した上で、60点のクオリティでもスピーディーに仕事を進められる人材こそが価値があるのです。
外注デザイナーには「このトーンで」「このテイストで」「ブランドイメージはこう」と細かく指示を出す必要があります。しかし社内の人間なら、そんな指示がなくても会社のことを理解しているから、ある程度のズレなく仕事を進められる。これが圧倒的な強みなのです。
上司はこの「全体を見る力」「推進する力」「調整する力」を持っています。それが、あなたが持っていないスキルです。
実体験:業界未経験の上司が統括部長になった話
筆者の会社で実際にあった話をします。ある事業部門に、業界未経験の人が統括部長として着任しました。
その業界のことは何も知りません。専門用語もわかりません。現場のオペレーションも理解していません。
「こんな人が統括部長なんて務まるのか?」多くの社員がそう思ったはずです。筆者も正直、疑問に感じました。
しかし、実際に働いてみて驚きました。この上司は圧倒的な成果を出したのです。
なぜか?前述した通り、上に行けば行くほど求められるスキルセットは全く異なるからです。
この上司が持っていたスキルは以下のようなものでした:
・数値という定量的な揺るがない事実から、経営課題を見出す力 ・課題に対して最速で解決策を打ち出す決断力 ・いけそうな市場への参入や投資を一気に推進する実行力 ・他部署を巻き込み、社内政治を乗り越えて物事を進める調整力
業界知識?そんなものは部下に聞けばいいのです。専門スキル?それも現場の優秀なプレイヤーがいます。
上司に求められているのは、そういった「個別のスキル」ではなく、「組織全体を動かす力」なのです。
プレイヤーと管理職・役員は生きている世界が違う
ここで理解して欲しいのは、プレイヤーと管理職、そして役員では、生きている世界が全く違うということです。
中国では出されたご飯を残すのが礼儀ですが、日本ではご飯を残すのは失礼にあたります。これくらい、全く違うフィールドで戦っているのです。
プレイヤーに求められるのは: ・高い専門スキル ・個人としての成果 ・担当業務の完遂
管理職に求められるのは: ・チームマネジメント ・複数の業務の優先順位付け ・他部署との調整 ・部下の育成 ・中長期的な視点での判断
役員に求められるのは: ・経営判断 ・事業全体の戦略立案 ・市場分析と投資判断 ・リスクマネジメント ・ステークホルダーとの関係構築
これだけ求められることが違うのに、プレイヤーとしてのスキルで上司を評価すること自体がナンセンスなのです。
決して、その業界・業種でのトッププレイヤーがそのまま上に行くわけではありません。むしろ、トッププレイヤーは現場に残って専門性を極める方が会社にとって価値があるケースも多いのです。
上司のスキル不足を嘆く前にすべきこと
このくらい理解すると、そもそも上司のスキルがどうとか関係なくなってきませんか?
あなたが今すべきことは、上司のスキルを批判することではありません。
まずは、上司にどんな「役割」が求められているのか?というスキルではなく、役割をしっかり聞くことです。
そして、上司に与えられた役割を全うできるようにサポートすることです。
上司が業界知識に乏しいなら、あなたがその部分を補えばいい。上司が専門スキルを持っていないなら、あなたがその部分で貢献すればいい。
逆に言えば、上司は全体を見る力、推進する力、調整する力であなたをサポートしてくれているはずです。
この相互補完の関係性こそが、強い組織を作るのです。
スキルを高めることの重要性は変わらない
ここまで読んで「じゃあスキルを高める必要はないのか」と思った方がいるかもしれません。それは違います。
スキルを高めることは非常に重要です。専門性を極めることで、あなた自身の市場価値は確実に上がります。
ただし、上司にそれを求めるのは意味がないということです。
上司は上司の役割があり、あなたにはあなたの役割がある。それぞれが自分の役割で最大限のパフォーマンスを発揮することが大切なのです。
上司のスキル不足を嘆いている時間があれば、自分のスキルをさらに磨く。そして、そのスキルを使って組織に貢献する。この方が圧倒的に生産的です。
まとめ:視点を変えれば悩みは消える
上司のスキル不足で悩んでいるあなたへ。
その悩みは、「戦っている土俵が違う」ことを理解していないから生まれているのかもしれません。
上司とあなたでは、求められているスキルも役割も全く違います。プレイヤーとしてのスキルで上司を評価すること自体が的外れなのです。
会社が管理職に求めているのは、120点の専門スキルではなく、60点でも全体を見て推進できる力です。
上司のスキルを批判する前に、まずは上司の役割を理解しましょう。そして、その役割を全うできるようにサポートしましょう。
この視点の転換ができれば、上司への不満は大きく減るはずです。そして、あなた自身も組織の中でより価値を発揮できるようになるでしょう。
この記事を読んだ1人でも多くの方が、上司との関係性で悩む時間を減らし、自分の成長や組織への貢献に時間を使えるようになれば、筆者冥利に尽きます。
あなたが今日から、上司との関係を「対立」ではなく「相互補完」として捉え直し、より生産的な仕事ができることを心から願っています。
最後まで見ていただき、ありがとうございました!
