- 「マネージャー候補」「幹部候補」という言葉は、あくまで採用のためのキャッチコピーに過ぎない
- 中途入社でいきなり偉そうに振る舞うと、信頼を得られず組織で浮いてしまう
- まずはプレイヤーとして成果を出し、信頼を積み上げることが最優先
- よくある失敗パターンは「前職ムーブ」「変えようとする人ムーブ」「会議で立派なことを言うムーブ」の3つ
- 小さくても良いので勝ち筋を作り、数字で結果を示すことが信頼獲得の近道
- 偉い役職と信頼は別物。信頼なき役職は誰もついてこない
「マネージャー候補として期待されて中途入社したのに、なかなか意見が通らない…」「幹部候補として入ったはずなのに、周囲との摩擦ばかり起きてしまう…」
こんな悩みを抱えて、職場で苦しんでいませんか?
期待されて入社したからこそ、何か変革を起こさなければ、意見を言わなければ、と焦ってしまう気持ちは痛いほどわかります。しかし、その焦りこそが、実は組織での信頼を失う最大の原因になっているかもしれません。
私自身、中途入社で3ヶ月でマネージャー、半年で部長職になった経験があります。だからこそ断言できるのですが、役職が上がることと信頼を得ることは全く別物なのです。
この記事では、中途入社で「いきなり偉い人ムーブ」をしてしまう危険性と、まずはプレイヤーとして信頼を勝ち取るべき理由について、実体験を交えながら徹底解説していきます。
向上心が高く、キャリアアップを目指すあなただからこそ、この記事の内容がきっと役に立ちます!
「マネージャー候補」「幹部候補」はキャッチコピーに過ぎない
中途採用の求人票で「将来の管理職候補」「幹部候補」「マネージャー候補」といった言葉を見かけることは多いと思います。このような言葉を信じて、期待を胸に入社する方も少なくないでしょう。
しかし、まず理解しておかなければいけないのは、これらの言葉はあくまで採用のためのキャッチコピーに過ぎないということです。
もちろん、企業側が嘘をついているわけではありません。どの会社も、将来会社の核となってくれる優秀な人材を採用したいという本心は持っています。
ただし、人事や採用担当部署と現場は、実はそれほど近い関係にない会社がほとんどなのです。今は人手不足の時代ですから、採用担当としては基本的に魅力的な言葉を並べて求職者にアピールせざるを得ません。
例えば「リモートワーク可」と書いてあっても、実際には週1回までしか認められないケースもあります。採用が難しい時代だからこそ、甘い言葉が溢れているのが現実です。
だから、これらの言葉を鵜呑みにしてはいけません。ただし、完全な嘘でもない。その微妙なバランスを、自分自身が理解しておく必要があるのです。
まずはプレイヤーとして信頼を積み上げよ
本題に入りましょう。どんな組織に行っても、まずはプレイヤーとして信頼を積み上げなければ、何も始まりません。
確かに、本当に幹部候補として、使用期間が終わったらマネージャー職に就いてもらうつもりで採用するケースも存在します。役職者が退職してしまい、どうしても穴を埋める必要があるような状況です。
私自身も、入社3ヶ月でマネージャーになり、半年で部長職になったという経験があります。マネージャー候補や幹部候補とまでは言われていませんでしたが、実際にそういうケースはあり得るのです。
しかし、そういった早期昇進のケースがあったとしても、いきなり偉い人ムーブをするのではなく、まずはプレイヤーとして信頼を積み上げることが絶対に必要です。
組織では実力よりも信頼が先
組織で動く以上、実力よりも先に信頼が大事なのです。
もちろん、実力—どんなスキルがあるか、何ができるか—は確かに大切で必要です。しかし、やったことに対して結果が出るのは、実は今日やって明日出るようなものではありません。
特に事業においては、例えば商品の企画を考えたとしても、その商品ができるまでに工場の生産ラインを整えたり、製造してくれる人を探したりと、様々なプロセスが必要です。今日良い企画を思いついても、それが実現してお客様のもとに届くのは、数ヶ月後、1年後ということも珍しくありません。
だからこそ、実力はもちろん大事なのですが、それ以上に信頼が全てなのです。
- 言ったことを期限通りにやる
- 課題を与えたら10くらいの解決策を考えてくる
- 小さな約束でも確実に守る
こういった信頼の積み重ねが、何よりも重要になります。
まずは自分がプレイヤーとして動いて信頼を積み上げること。そこで初めて、発言力や裁量、影響力というものが今いるメンバーから与えられるのです。
立場や位置を勘違いしてはいけない
どんなにマネージャー候補だろうと、今までの実績があろうとも、新しい会社に入れば、その会社では少なからず見習いなのです。
「郷に入っては郷に従え」という言葉がありますが、まさにその通り。その会社に入って日が浅ければ、会社の文脈も人間関係もわからないのですから。
もちろん、1ヶ月、2ヶ月やっていれば、なんとなく見えてくるものもあります。信頼を築いた上で、「このままプレイヤー業務だけをやっていてはダメだ。自分はマネジメントして組織を動かすことが求められている役割だから、プレイヤー業務を徐々に譲渡していこう」と考えるのは大事かもしれません。
しかし、基本的には信頼を築き上げることが最優先なのです。
よくある失敗パターン3選
中途入社で「いきなり偉い人ムーブ」をしてしまう人には、典型的な失敗パターンがあります。ここでは代表的な3つを紹介しましょう。
失敗パターン①:前職ムーブ
指示を出すときに、信頼も獲得できていないのに「前職ではこうだった」「前職ではこううまくいったから、こうなるはずだ」と言ってしまうパターンです。
**そもそも文脈が違うのです。**前職は前職の話であり、今の会社とは全く別物です。
全く同じ業種業態で、同じような人員構成であれば通用するかもしれませんが、あくまで前職の話に過ぎません。
もちろん、自分の経験として「こういううまくいったケースがあった」と共有するのは良いことです。しかし、信頼も信用もないのに「前職ではこうだったから、こうすべきだ」と指示されても、誰も受け入れられません。
だから、前職ムーブは絶対にやめてください。
失敗パターン②:変えようとする人ムーブ
「革命を起こそう」「180度事業を変えよう」と意気込む人も要注意です。
確かに、変革を起こそうとする姿勢は大事です。しかし、相手からしたら、その人がどんな結果を出してきたのか、前職でどれだけ偉かったのかなんて、正直わからないのです。
「前職で部長でした」と言われても、5人の会社で部長と言われても「いやいや…」となってしまいます。100人の会社で部長だったとしても、実は家族経営で役員は全員身内、部長という役職はあるものの実権は全てファミリーが握っている、なんてケースも珍しくありません。
**変えようとすることは大切ですが、まず結果を出してから言えよ、となってしまうのです。**これも失敗するパターンの典型です。
失敗パターン③:会議で立派なことを言おうとするムーブ
現場をよく知らないのに、入ってすぐに現場を知ったような立派なことを言ってしまうパターンです。
そうすると「こいつ、口だけだな」と見られてしまいます。
もちろん、現場を知らなくてもビジネスは全然できます。上に行けば行くほど、現場とは離れて、損益計算書や貸借対照表を見たり、数字で判断することが求められます。
しかし、最初からそのスタンスだとマジできついのです。
最初はあくまで現場の一員として、自分もプレイヤーの1人として行動していかなければなりません。
優秀な評論家より成果を出す実務家になれ
会社では、優秀な評論家よりも成果を出す実務家が評価されます。
評論家みたいな人は、偉そうな立ち位置にいますが、そういうのが通用するのはテレビだけです。テレビでも、評論家が尖ったことを言うから議論が盛り上がって視聴率が稼げるから起用されているだけで、実際の価値はほぼありません。
普通に考えて、外から文句を言っているだけの人に価値があるでしょうか?
**組織に入ったら、絶対に評論家になってはいけません。**プレイヤーとして、まず結果を出すこと。そこからがスタートなのです。
ワンクールからツークールは成果にコミット
具体的には、最初の1クール(1〜2ヶ月)から2クール(3〜6ヶ月)は、成果を出すことにコミットしてください。
少なくとも、最初の3ヶ月から半年くらいは、信用なんて一朝一夕で築けるものではありません。だから、黙ってプレイヤー業務をやって成果を出すことに集中するのです。
小さくても良いので勝ち筋を作れ
「新規事業を任されて入社した」というケースも多いでしょう。新規事業が正義みたいな雰囲気になってしまいがちですが、現実はそう甘くありません。
新規事業を立ち上げて売上を1億、2億作るなんて、簡単にできる人はいません。もしそれができるなら、会社員なんてやらずに起業した方が良いのです。
少なくとも、今まで会社員として生きてきたのですから、急に1億、2億の事業を作ることは難しいのが現実です。
しかし、組織の中で生き残っていくスキルというのは、起業とは違います。起業家は尖っている人が多く、組織の中で横並びにするのが結構きついという人も少なくありません。
でも、あなたにはそれ(組織で働くスキル)があるのですから、まず小さくても良いので勝ち筋を作って、そこで数字を作って信頼を得れば良いのです。
それが結局、最短でマネジメントを始める近道だったりするのです。
筆者の経験:プレイヤー業務を続ける理由
私の経験を少しお話しします。
私は同じような業界の会社に転職したため、業界知見があることや、自分で会社経営をしていた経験もあったため、幹部候補というかマネージャー候補みたいな形で今の会社に入社しました。
そして、入社3ヶ月でマネージャー職に、半年で部長職になりました。
しかし、マネージャー職になっても、部長職になっても、全然プレイヤー業務を続けています。
部長職がプレイヤーというのが良いかどうかという議論は一旦置いておきます。正直、全然良くないと思いますし、マネージャーは管理に徹するべきだと私も思います。
ただし、信頼もないのに、いきなり「俺は部長だから、そんなのやらないよ!」というスタンスは絶対にダメだと思っているのです。
まず信頼を得ないといけない。だから、あえてプレイヤーをやっているし、プレイヤーとして結果を出すことにコミットしています。
プレイヤーとして歩むことで得られる真の信頼
そうすると、最初は今までプレイヤーをやっていた人の方が詳しいので、向こうの方が立場は上です。しかし、一緒にプレイヤーとして働いていくうちに、ふと役職が上がっただけで、向こうから質問してくるケースが実は増えてくるのです。
一緒にプレイヤーとして歩んだからこそ、ちゃんと聞いてくれる。「この人はわかってくれるから、相談できるな」という信頼を得られるのです。
だから、自分の経験からしても、プレイヤー業務をまずはやるというのは、めちゃくちゃ正しくて、絶対的にやるべきだと思っています。
まとめ:信頼なき役職は意味がない
結論として、役職候補なんていうものは、入ってしまえばただの紙切れみたいなものです。
まず入ったら、信頼・信用を築きましょう。信頼が貯まるまでは、絶対的にプレイヤーでいてください。
偉くなることと信頼を持つことは、決して一緒にしてはいけません。
「偉いから信頼がある、信用がある」というのは、全然違います。だから、そこは履き違えてはいけないのです。
「偉いから信用がなくていいんだ」なんてことは絶対にありません。組織は人間関係で成り立っているので、信用はあるに越したことはありません。
まず、信頼を得ることを大前提として、会社の中で信頼を得るには、プレイヤー業務を一生懸命やって、まず結果を出すこと。小さくても良いから、結果を出すこと。
これが一番、信頼を得る方法なのです。
この記事を読んだ1人でも多くの方が、中途入社での立ち回り方について理解を深め、組織での信頼構築に成功し、キャリアの悩みが1つでも減れば筆者冥利に尽きます。
向上心を持って新しい環境に飛び込んだあなたなら、きっとプレイヤーとして素晴らしい成果を出せるはずです。焦らず、まずは信頼を勝ち取ることから始めましょう!最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
