- 会社が成長すると、立ち上げメンバーと後から入社した優秀な人材との間で摩擦が生まれるのは避けられない
 - 立ち上げメンバーは自分たちが作ってきたルールや環境を変えられることに抵抗を感じ、居心地の悪さから新メンバーへの反発につながる
 - 後から入る人材の方が市場的には優秀だが、会社内の知識では立ち上げメンバーに敵わないという対立構造が生まれやすい
 - 摩擦を減らすカギは「過去への敬意」にあり、歴史を理解しようとする姿勢と相談
 - 共有を重ねることで本音ベースの関係を築ける
 - 筆者自身もメガベンチャーで後から入社し部長職に就いたが、立ち上げメンバーへの敬意を忘れないことで批判を受けながらも出世できた
 
「後から入社したのに、なぜか古参メンバーから煙たがられる…」 「優秀だと言われて入ったのに、なぜか提案が通らない…」
こんな悩みを抱えながら、日々職場で戦っていませんか?
会社が成長すると、立ち上げメンバーと後から入社した優秀な人材との間で必ず摩擦が生まれます。これは、どんな企業でも起こる避けられない現象です。実際、この摩擦が原因で、せっかく採用した優秀な人材が次々と辞めていくケースは後を絶ちません。
しかし、この摩擦を最小限に抑え、立ち上げメンバーを味方につける方法は存在します。
筆者自身、数千人規模のメガベンチャーに後から入社し、入社間もなくして立ち上げメンバーより上の部長職に就きました。当然、批判の対象になりましたが、ある方法を実践することで摩擦を減らし、今では周囲の支持を得ながら仕事を進められています。
本記事では、筆者の実体験をもとに、立ち上げメンバーとの摩擦が起きる本質的な理由と、その解消法について詳しく解説していきます。向上心のあるあなたにこそ、ぜひ読んでいただきたい内容です。
立ち上げメンバーとの摩擦は避けられない現実
どこの会社でも起きる「避けられない摩擦」
会社が成長してくると、初期から支えてきたメンバーと、後から入ってきたメンバーとの間で、必ずと言っていいほど摩擦が生まれます。
特に顕著なのが、会社が大きくなってから採用される人材です。企業規模が拡大すると採用力も上がり、より優秀な人材を獲得できるようになります。そして、この「後から入ってきた優秀な人材」と「立ち上げメンバー」との間で、摩擦が起きやすいのです。
結論から言うと、この摩擦は起きてしょうがないものです。そして残酷なことに、多くのケースで後から入ってきた優秀な人ほど会社を辞めてしまいます。
なぜ摩擦が生まれるのか?立ち上げメンバーの心理
では、なぜこのような摩擦が生まれてしまうのでしょうか。
立ち上げメンバーほど、「会社を作ってきた」という強い思いがあります。その会社独自のローカルルールを作ってきたのも自分たちです。だからこそ、そのルールを変えられることが、どうしても嫌なのです。
本来であれば、優秀な人材は欲しいはずです。本来であれば、優秀な人と一緒に事業を育てていくべきです。
しかし、自分たちが作ってきた環境が変わることは、イコール居心地が悪くなることを意味します。この居心地の悪さが、新しく入ってきた人材への反発や受け入れ体制のなさにつながり、摩擦を生み出してしまうのです。
創業メンバー側から見た景色
一方、創業メンバー側の視点に立ってみましょう。
「自分たちがこの事業を作ってきたんだ」 「これからも自分たちがやっていくんだ」 「どんなメンバーが入ってこようが、この事業について一番知っているのは自分たちだ」 「この事業を育てるのも自分たちだ」 「成功例があるんだから、そのレールに乗ってくればいい。そうすれば絶対うまくいく」
このようなメンタリティで、新しいメンバーを迎えているのです。
これは、どちらが良いとか悪いとかではありません。双方の立場から見れば、それぞれの主張に理があります。
「市場的な優秀さ」と「会社内での優秀さ」の違い
残酷な現実:後から入るメンバーの方が市場的には優秀
ここで残酷な現実をお伝えします。
後から入ってくるメンバーの方が、市場的には優秀と評価される人材であることが多いのです。
もちろん、実績ベースで見れば、立ち上げメンバーも絶対的に優秀です。辛い時期に一緒に戦い、歯を食いしばって事業を育ててきたのですから。根性もあるし、能力もあります。大切な存在であることは間違いありません。
しかし、時代の流れは驚くほど速いのです。
「若ければいい」というわけではありません。しかし、トレンドをつかむ能力は、どうしても若い人には敵いません。IT技術が進化し、情報が多様化していく中で、後から入ってくる人の方が、外の世界の最新情報を持っているのです。
会社内の知識 vs 市場の知識
会社内での知識は、創業メンバーには敵いません。
その会社の歴史、これまでの失敗と成功、社内の人間関係、独自のルール…これらすべてにおいて、立ち上げメンバーの知見は圧倒的です。
しかし、その会社以外の市場の知識、使われているツール、業界のトレンド…こういった「外の世界」については、新しいメンバーの方が詳しいわけです。
だからこそ摩擦が生まれます。そして、優秀な上に、創業メンバーも新しいメンバーも互いに避けたいと思う対立構造ができあがってしまうのです。
これは、本当にまずい状況です。
筆者の実体験:メガベンチャーでの摩擦との向き合い方
数千人規模の企業で起きている現実
筆者自身、現在メガベンチャーで働いています。創業約20年、数千人規模の会社です。
数千人もいると、新しいメンバーも多く、創業メンバーは本当に限られた数十人程度です。
しかし、各事業部や部署ごとには、「この事業は自分が立ち上げた」という立ち上げメンバーが存在します。そこで摩擦が起きているのです。
全体で数千人規模の企業ですから、毎年毎月のように人が入ってきますし、逆に毎月のように人が辞めていきます。流動性は非常に高い状態です。
そして、流動性が高い事業ほど、この摩擦が大きな問題となっています。昔からいる人たちがその部署にずっといて、新しいメンバーが入れ替わる…そんな構造ができあがってしまっているのです。
後から入って出世した筆者が直面したこと
筆者自身も後から入ったメンバーです。まさにこの摩擦が起きやすい立場にいます。
そして、入社間もなくして出世し、昔からいる立ち上げメンバーより上の立場、部長職に就いてしまいました。当然、摩擦の対象、批判の対象になりました。
正直に言えば、何かをやろうと提案したときには、批判は山ほどあります。
しかし、今のところ業務は進められていますし、周囲の支持を得て部長職に就くことができています。
なぜでしょうか?
摩擦を減らすカギは「過去への敬意」にある
立ち上げメンバーが本当に求めているもの
立ち上げメンバーほど、自分たちがやってきたという自負があります。だからこそ、寂しいのです。
自分たちが知らないところで、ルールが決まったり、方向性が決まったりすること。それが、摩擦につながるきっかけの一つだと筆者は考えています。
だからこそ、事業がどこを目指していくのか、どう考えているのか…そういった意見を、立ち上げメンバーに相談したり共有したりするようにしています。
もちろん、経営層との話を何でもかんでも共有していいわけではありません。そこは線引きが必要です。
しかし、「こういう考えがあるんですけど、どうですかね」「時代は違うかもしれないけど、昔はこういうことをやっていたんですか」「もし失敗例があったら、歴史を知りたいので教えてください」
こうやって、過去に対して敬意を示しながら進めると、本音ベースでいろいろと話してくれるようになるのです。
昔からいるメンバーが持つ「本音」
昔からいるメンバーほど、起業当初の理不尽なことや、意味のないことをたくさんやってきたことを、自分たちが一番理解しています。
だからこそ、「今の人は、自分たちが作った土壌で、努力もせずに結果を出して…自分たちのおかげなのに」という不満が溜まっていくのです。
しかし、裏を返せば、そこに対してちゃんとリスペクトがあれば、彼らも「正直、無駄なこともしてきた」という自覚を持っています。特に昔からいるメンバーは、自分自身が一番それを分かっているのです。
人間は、負けを認めたくないものです。(そもそも負けているわけでもないのですが)
だから、自分から「古い人間だから分からない」とは言いません。しかし、そういった本音を話せるくらい、過去にリスペクトを持って接すれば、彼らは心を開いてくれるのです。
具体的な実践方法:敬意を示すコミュニケーション術
「教えてください」という姿勢の威力
筆者が実践している具体的な方法をお伝えします。
「こういうことをやろうと思っているんですけど、どうですか?」 「こういうことをしてきましたか?」 「もし失敗例があったら、聞いておきたいです」
このように、敬意を持ちながら話すと、創業の辛い時期を経験してきた人は、意外と話してくれるものなのです。
そして、そこに対してしっかりと敬意を払って進めていけば、摩擦は意外に減らせます。
頭打ちの事業を任される新メンバーの使命
新しく入ってくる優秀な人材は、多くの場合、頭打ちになっている事業を任されます。
数字で言えば、0から50まで持っていった立ち上げメンバーがいて、しかし50から51、52…と伸びなくなった。60にならない。そんな状況で、「ここから先を伸ばしてほしい」という期待を背負って入社してくるわけです。
だからこそ、「自分が変えてやる」「方向性を一気に変えるんだ」「伸びていないんだから、そのやり方は間違いなんだ」という気持ちで入ってきます。
しかし、ここで忘れてはいけないことがあります。
採用できる土壌を作ったのは誰か?
そもそも、あなたのような優秀な人材を採用できる土壌に、その会社が立っていること自体がすごいことなのです。
そこまで持っていった最初のメンバーが、どう考えてもすごいのです。
もちろん、「自分が方向性を変えてやる」「ここから自分が育てるんだ」と期待されて入社するのは素晴らしいことです。それはあなたの使命です。
しかし、どんなに今、売上が伸びていなくても、あなたを採用してもらえるということは、その会社に体力があるということです。そもそも売上があるということです。
それは、今いる人が悪いわけではなく、むしろ頑張ってきて売上を作ってきた結果なのです。
直近が頭打ちだったり、伸びていなくても、その人たちに対する敬意は絶対に忘れてはいけません。
敬意を忘れなければ出世できる
お伺いを立てる必要はないが、理解しようとする姿勢は必要
誤解しないでいただきたいのですが、いちいちお伺いを立てる必要はありません。
しかし、歴史を理解しようとする姿勢、敬意を払うという姿勢は、絶対に忘れてはいけません。
逆に言えば、それを忘れなければ、今の筆者のように、批判を受けながらも摩擦を最小限に抑えて出世することができます。
応援してもらった方がプラスになる
出世して、自分が引っ張っていく立場になったとき、立ち上げメンバーに応援してもらった方が、絶対にプラスです。
彼らは会社の歴史を知っています。社内の人脈を持っています。過去の失敗と成功を体験しています。
そんな人たちを敵に回すのではなく、味方につける。そのために必要なのは、特別なスキルではありません。
「敬意」という、シンプルだけど最も重要な姿勢なのです。
向上心のあるあなたへ:摩擦を恐れず、敬意を持って進め
立ち上げメンバーとの摩擦は避けられません。それは事実です。
しかし、その摩擦を最小限に抑え、むしろ彼らを味方につけることは可能です。
必要なのは、テクニックではなく「敬意」です。
過去を否定せず、歴史を理解しようとし、相談しながら進める。たったこれだけで、本音ベースの関係が築け、摩擦は驚くほど減っていきます。
後から入った優秀なあなたには、事業を伸ばす使命があります。しかし、その土壌を作ったのは立ち上げメンバーです。この事実を忘れずに、敬意を持って仕事をしていく。
それが、あなたが長く活躍し、出世していくための最も確実な方法なのです。
まとめ
立ち上げメンバーとの摩擦は、成長する企業において避けられない現象です。しかし、過去への敬意を忘れず、歴史を理解しようとする姿勢を持ち続けることで、その摩擦は最小限に抑えることができます。
筆者自身、後から入社して部長職に就きましたが、批判を受けながらも、立ち上げメンバーへの敬意を忘れないことで今の立場を築くことができました。
お伺いを立てる必要はありませんが、相談し、共有し、教えを乞う姿勢は持ち続けるべきです。そうすることで、立ち上げメンバーは味方になってくれます。
向上心のあるあなたなら、必ずこの壁を乗り越えられます。この記事を読んだ1人でも多くの方が、職場での人間関係の悩みや、立ち上げメンバーとの摩擦に対する不安が1つでも減れば、筆者冥利に尽きます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
