- 管理職になると売り上げを直接上げる仕事から離れ、マネジメント業務や仕組みづくりが主な役割になる
- プレイヤー時代は売り上げ=努力の証しだったが、管理職には「売り上げを上げない仕事」が求められる
- 多くの管理職が現場に降りてプレイヤーの仕事をしてしまうが、これは若手の成長機会を奪い、組織の長期的成長を妨げる「逃げ」である
- 筆者自身も最初は現場に降りていたが、任せることで新卒が自分にできないことを成し遂げる姿を見て、マネージャーとしての役割を再認識した
- 管理職の真の仕事は、仕組みやルールを作り、メンバーが働きやすい環境を整えること
- やりがいを「自分の成果」から「チームの成果」へと視点を変えることで、管理職としての充実感が得られる
「管理職になったけど、プレイヤーの仕事ができなくてやりがいを感じない」「現場の仕事に手を出してしまう自分がいる」
こんな悩みを抱えていませんか?出世して役職が上がったのに、売り上げを直接上げられない自分に違和感を覚え、ついつい現場の仕事に介入してしまう…。そんな経験をしている方は少なくないはずです。
実は、筆者自身も管理職になった当初は同じ悩みを抱えていました。「自分がやった方が絶対に良い結果が出るのに」「最近、全然働いている気がしない」そんな思いから、現場の仕事に降りてしまっていたのです。
しかし、ある時を境に考え方が180度変わりました。現場に介入せず、思い切って若手に任せてみたところ、自分にはできなかったことを新卒が成し遂げたのです。その瞬間、マネージャーとしての真の役割に気づかされました。
この記事では、プレイヤーからマネージャーへの意識転換の方法と、管理職としての本当のやりがいの見つけ方について、筆者の実体験を交えながらお伝えします。今、管理職として悩んでいるあなたの心が少しでも軽くなれば嬉しいです!
役職が上がるほど「売り上げを上げないスタッフ」になっていく現実
まず、厳しい現実をお伝えします。上に行けば行くほど、役職が上がれば上がるほど、あなたは直接的に売り上げを上げないスタッフになっていくのです。
これは決して実力がなくなるという意味ではありません。むしろ逆です。上に行けば行くほど、マネジメント業務や仕組みづくりといった、より重要な役割を与えられるようになるということなのです。その結果、必然的に現場の仕事からは離れていくことになります。
営業職を例に考えてみましょう。プレイヤー時代は朝から晩まで営業に出て、数字が伸びれば社内の成績グラフもどんどん上に伸びていく。自分は売り上げを上げられている、会社に貢献できているという実感が、明確な数値として目の前に現れていたはずです。
この「売り上げ」という数字は、単なる業績指標ではありませんでした。あなたの努力の証しであり、存在証明であり、何よりもやりがいそのものだったのではないでしょうか。
プレイヤー時代のやりがいと管理職に求められる役割のギャップ
しかし、マネジメント層や管理職に求められることは大きく変わります。もちろん「数字を上げろ」という点は変わりません。ただし、その方法が根本的に異なるのです。
自分がプレイヤーとして営業に出て数字を上げるのではなく、仕組みを作る、構造を整える、今のプレイヤーが仕事をしやすい環境をつくっていく。経営の判断や方針を現場に落とし込む。経営に近くなればなるほど、ルールを作ったり、守りの仕事も多くなってきます。
マネージャーや管理職には、こういった役割が求められるのです。そして筆者も、管理職はそういう仕事をすべきだと心から思っています。
ただ、ここに大きな問題があります。今まで自分で数字を作ってきた、自分でプレイヤーとしてやってきた、それが努力の証しであり存在価値だったあなたにとって、この変化は違和感しかないはずなのです。
多くの管理職が陥る罠:現場に降りてしまう理由
この違和感に耐えられず、多くの管理職は現場に降りてしまいます。
「現場に近いマネージャーだから、現場のメンバーは嬉しいだろう」「自分が手伝えば数字が上がるし、ありがたいと思われるはずだ」そんな風に考えているかもしれません。もちろん、邪魔だと思う人もいるでしょうが、感謝される場合もあるでしょう。
しかし、ここではっきり申し上げます。これは「逃げ」なんです。
筆者からすると、現場に降りる管理職は、マネージャーとしての役割から逃げているとしか思えません。なぜなら、あなたが現場で成果を上げれば上げるほど、今の現場の人の成長機会を奪っていることになるからです。
一時的には数字が上がって「良かった、あなたのおかげです」となるかもしれません。しかし、長期的に見てどうでしょうか?若い人の成長機会を妨げている=組織の長期的成長では全くないのです。
ただ、できるあなたが今まで通り結果を出しているだけで、できない人ができるようになっているわけでも、誰かの芽が出てきているわけでもない。組織として成長していないのです。
そして何より、**あなた自身もマネージャーとして成長していません。**会社から管理職やマネジメントの役割を与えられているにもかかわらず、ずっとプレイヤーになってしまっているのです。つまり、あなた自身も会社に貢献しているようで、求められている役割を全うしていないことになります。
こういった厳しい現実を、まずはしっかりと受け止める必要があります。
筆者の経験談:現場に降りていた時期の葛藤
実は、筆者自身もマネージャー職になった当初は、まさにこの状態でした。
「自分がやった方が絶対に良い結果が出るのに…」「全然働いている気がしない…」会社に行っても、スプレッドシートをいじっているだけで、本当に働いている実感が湧かなかったんです。
この気持ちの歪みに耐えられず、結構現場の仕事に降りてしまっていました。目の前で困っているメンバーを見ると、つい手を出してしまう。自分がやれば30分で終わることを、若手が2時間かけてやっているのを見ると、「自分がやった方が効率的だ」と思ってしまうんですよね。
でも、これは完全に間違った考え方でした。
転機:任せることで見えた可能性
ある時、筆者はマネジメント理論(PM理論)を勉強する機会がありました。そこで学んだことを実践してみることにしたんです。
具体的には、こんなアプローチをとりました:
- 役割を明確に与える
- ゴールを明確にする
- そこまでの過程には干渉しない
- 毎週月曜日の午前中にミーティングを行い、今週やることを決める
- 基本的には次の月曜日に1週間やってきたことの進捗報告と数字だけをもらう
- また今週どう走っていくかをコミュニケーションを取る
つまり、思い切って任せることにしたのです。
最初は不安でした。もちろん、自分が干渉しないことによる失敗もありました。「ああ、やっぱり自分が見ていないとダメだ」と思う瞬間も何度もありました。
しかし、自分が干渉しないことによってできたこともたくさんあったんです。
「今までの自分だったらこんな発想はなかったな」「これ、全部任せたから出てきたアイデアだな」そう思える瞬間が増えていきました。
そして、決定的な出来事がありました。それを成し遂げたのが、新卒だったんです。
衝撃の瞬間:自分にできないことを新卒が成し遂げた
新卒が、自分にはできなかったことを、自分とは違うやり方で成し遂げたんです。
その瞬間、「なるほどな」と腑に落ちました。
普通に考えて、自分も出世しているし、ちゃんと評価されて昇給もしている。プレイヤーとしての能力はあるし、そういう自信もある。会社からも認められている。
ただ、自分のやり方だけが上に行く方法じゃない、結果を出す方法じゃないんだという現実を、そこで思い知らされたわけです。
なぜか?新卒ですよ。新卒が「自分には無理だったな」ということをバッと結果として出してくるんですから。もちろん運の要素もあったかもしれません。でも運だろうと何だろうと、ちゃんと結果が出ているし、自分ができないことをやったんだから、それはすごいことなんです。
ここで初めて、マネージャーとして一歩引いて、現場の仕事には介入しないようにしようと心から決めることができました。
マネージャーとしての真の役割:仕組みをつくる側へ
そこからは、マネージャーとしての本来の仕事に徹底的にフォーカスしました。
具体的には、こんなことをやりました:
失敗確率を減らす守りの仕事
チームが同じミスを繰り返さないように、チェックリストを作ったり、プロセスを標準化したり。これは地味ですが、組織として非常に重要な仕事です。
生産性を上げる構造づくり
新人が働きやすいように、できるだけミーティングの回数を減らしました。ミーティングが多ければ多いほど時間を失うだけでなく、そこに向けて議事録を作ったり準備したりと、余計な作業が発生してしまいます。
そこで、ミーティングの回数を減らす代わりに、一回のミーティングの質を濃くするために、こちらがフォーマットを作って「これだけ埋めてきて」という形にしました。
提案が通りやすい環境づくり
メンバーが何かやりたいことがあった時に、提案が通りやすいように提案フォーマットを作りました。
だいたい若手の提案は、お金周りの試算が甘かったりするんです。そこで、数字だけ入力したら「これくらいの売上が上がって、これくらいの利益が出て、だいたいコストはこのくらいかかって、その上で何%くらい利益として残る。これぐらい利益が残るなら、何十万ぐらいまでは投資して大丈夫」というのが、なんとなくわかるようなシートを作ったんです。
こういった仕組みづくりに徹底した結果、チーム全体のパフォーマンスが明らかに上がりました。
若い人が活躍する組織こそが強い
最終的に、このアプローチの方が圧倒的に良かったんです。
もちろん、プレイヤー時代の自分のことを考えたら「あの時、楽しかったな」「また、やりたいな」と思うこともあります。プレイヤーとして結果を出す快感は、確かに忘れがたいものです。
しかし、組織からしたら、若い人が活躍するに越したことはないのです。
これはどんな現場でも同じですが、スポーツが特にわかりやすいでしょう。もちろん、ベテラン選手が活躍していて強いチームもあります。でも、若い人が活躍しているチームの方が、圧倒的に強い場合が多いんですよね。どんどん新しいスターが出てくるチームには、独特のエネルギーがあります。
これは不思議なもので、若いエネルギーには勝てないというか、そういうものなんです。新しい発想、新しいやり方、新しい挑戦。そういったものが組織を活性化させ、長期的な成長につながっていきます。
「売り上げを上げない仕事」を恐れるな
だからこそ、あなたに伝えたいのは**「売り上げを上げない仕事を恐れるな」**ということです。
売り上げを上げない仕事の経験がないから怖いし、プレイヤーに降りたがるんです。その気持ちは痛いほどわかります。でも、そこで降りてしまったら、あなた自身が自分で役職を降りているようなものになってしまいます。
もう手を動かして成果を出す時代は終わったんだと、まずは受け入れてください。
でも、安心してください。手を動かさなくても成果を出せるんです。それは、仕組みを作る側、ルールを作る側に回ることで実現できます。
今まで自分が売り上げを上げてきたように、今度は下のメンバーたちの売り上げが上げやすい環境をつくってあげる。そういった思考、そういった視点を持って仕事をすることで、この悩みから脱出できるのです。
視点を変える:自分の成果からチームの成果へ
ここで重要なのは、見る範囲を広げるということです。
自分が上げた成果ではなく、チームが上げた成果を見る。この視点の転換が、管理職としての充実感につながります。
考えてみてください。自分一人で上げられる成果と、チーム全体で上げる成果、どちらが大きいでしょうか?答えは明白ですよね。どう考えてもチームで上げる成果の方が、数字は大きくなっていくんです。
だから、そこを見ていけばいいんです。
やりがいを「自分の成果」から「チームの成果」へ。この視点を変えることで、プレイヤー時代とは違う、でも同じくらい、いやそれ以上の充実感を得られるようになります。
月次報告で「今月、チームで過去最高の売上を達成しました」と報告できた時の喜び。新人が初めて大きな契約を取ってきた時の嬉しさ。自分が作った仕組みがうまく機能して、チーム全体の効率が上がった時の達成感。
これらは、プレイヤー時代の「自分が契約を取った」という喜びとは質が違いますが、同じくらい、いやそれ以上に深い満足感をもたらしてくれます。
それこそが組織への真の貢献
最後に、もう一度お伝えします。
現場に降りて自分が数字を上げることは、一見すると会社への貢献に見えるかもしれません。でも、それは本当の貢献ではありません。
本当の貢献とは、あなたがいなくても成果が上がる仕組みを作ることです。
メンバーが成長し、自走できるチームを作ること。新しいアイデアが生まれやすい環境を整えること。失敗を恐れずチャレンジできる文化を醸成すること。
これらこそが、管理職としてのあなたに求められている、組織への真の貢献なのです。
プレイヤーからマネージャーへの転換は、確かに簡単ではありません。今まで頼りにしてきた「売り上げ」という明確な指標が見えなくなり、不安になる気持ちもよくわかります。
でも、その先には、より大きなやりがいが待っています。
自分一人では成し遂げられなかった大きな成果を、チームで実現する喜び。メンバーの成長を見守り、サポートする充実感。組織全体を良くしていく手応え。
これらは、プレイヤー時代には味わえなかった、マネージャーならではの醍醐味です。
まとめ
管理職になって現場の仕事ができなくなった時、多くの人が違和感を覚え、現場に降りてしまいます。でも、それは「逃げ」であり、若手の成長機会を奪い、組織の長期的成長を妨げてしまいます。
マネージャーの真の役割は、仕組みを作り、環境を整え、メンバーが最大限のパフォーマンスを発揮できるようサポートすることです。
視点を「自分の成果」から「チームの成果」へと転換することで、プレイヤー時代とは違う、でも同じくらい深い充実感を得られるようになります。
手を動かさなくても成果を出せる。それが、管理職としてのあなたの新しい挑戦です。
この記事を読んだ1人でも多くの方が、管理職としての役割に前向きに取り組めるようになり、「プレイヤーの仕事ができない」という悩みが1つでも減れば筆者冥利に尽きます。あなたのマネージャーとしての新しいキャリアが、充実したものになることを心から願っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

