- できる人に業務が集中する現象は、個人にとっては成長のチャンスだが、組織としては危険信号である
- できない人ができる人に業務を依頼する「逆転現象」が発生し、組織の成長を妨げている
- 筆者は半年で部長職に昇進したが、組織全体を見渡したときに、この構造の問題点に気づいた
- できる人への業務集中は、その人が潰れるリスクを高め、組織全体のスキルアップを阻害する
- マネジメント層は積極的に介入し、業務の偏りを是正する責任がある
「またあの人に頼めばいいか」「○○さんなら何でもできるから任せよう」
あなたの職場で、こんな会話が日常的に交わされていませんか?特定の「できる人」に業務が集中し、その人がいないと仕事が回らない…そんな状況は一見、効率的に見えるかもしれません。
しかし、これは組織にとって非常に危険な兆候です。
筆者は32歳で大手ベンチャーの部長職を務めていますが、半年という短期間で昇進できたのは、まさに「何でも自分でやってきた」からです。ただ、役職が上がり組織全体を俯瞰する立場になった今、気づいたことがあります。
それは「できる人に業務が偏っている組織は、実は終わりに向かっている」ということです。
本記事では、なぜできる人への業務集中が組織にとって危険なのか、そしてどう対処すべきかを、筆者の実体験を交えて解説します。向上心のある方にこそ、ぜひ読んでいただきたい内容です。
できる人に仕事が集まるのは当然だが…
個人視点では最高の環境
まず前提として、できる人に仕事が集まること自体は、個人のキャリアにとっては悪いことではありません。むしろ、喜ばしいことです。
仕事が回ってくるということは、それだけ信頼されている証拠ですし、打席数が増えれば増えるほど、結果を出すチャンスも広がります。実際、私自身も様々な業務を引き受けてきたからこそ、守備範囲が広がり、半年で部長職まで昇進できました。
できる人にとって、仕事があるに越したことはありません。仕事をもらえるというのは本当に幸せなことですし、出世するためには必要不可欠な経験値です。
しかし組織視点では大問題
ところが、組織として見たときには、この状況は全く異なる意味を持ちます。
できる人に業務が集中するということは、裏を返せば「他の人に成長機会がない」ということです。そして、もっと深刻なのは「できない人ができる人に仕事を振る」という、本来あるべき姿とは逆転した構造が生まれてしまうことです。
普通に考えれば、できる人の方が偉いはずです。スキルがあり、結果を出している人が、組織内で高い立場にいるべきです。
にもかかわらず、できない人が「これできないので、○○さんやっておいてください」と依頼する。この構造、おかしいと思いませんか?
筆者の実体験:部長職になって見えた組織の歪み
何でも自分でやってきた結果
私自身、大企業での勤務経験がないため、何でも自分でやるのが当たり前という環境で育ってきました。
デザインも、マーケティングも、データ分析も、プレゼン資料作成も—専門家レベルではないかもしれませんが、一通りのことは自分でできます。守備範囲が非常に広いんです。
そのため、「これお願いしてもいいですか?」という相談を頻繁に受けます。できるから引き受けますし、実際にやってきました。それが評価され、半年で部長職まで昇進できたのですから、個人としてはマイナスには捉えていません。
立場が変わって気づいた違和感
ただ、部長職になって、依頼してきた人よりも上の立場になったとき、ふとこう思ったんです。
「これ、できない人ができる人に業務を頼んでいるだけじゃないか?」
個人としては問題ないんです。できる人がやればいい。それで組織が回るなら、それでいいとも思います。
でも、組織として考えたときに、本当にこれでいいのか?全員ができるに越したことはないし、一部の人間に依存する体制は、明らかに健全ではありません。
役割分担と「丸投げ」の違い
適切な依頼とは何か
誤解しないでいただきたいのですが、役割が分かれている場合の依頼は問題ありません。
例えば、デザイナーとマーケティング部署が分かれているなら、マーケティングの人がデザイナーに「こういうビジュアルを作ってほしい」と依頼するのは当然です。逆に、デザイナーが「こういう画像を作ったので、広告に使えるなら使ってください」と提案するのも自然な流れです。
これは適切な役割分担です。
同じ部署内での丸投げは問題
しかし、同じ部署内で、本来自分たちで解決すべきことを丸投げするのは話が違います。
例えば、「アクセス数が減ったかもしれません。なぜ減ったか調べてください」という依頼。
いやいや、それは自分たちの部署のことなんだから、自分たちで解決しなければいけない課題でしょう。専門のアナリストがいないのであれば、自分で調べるべきです。そのくらいは自分でできるはずです。
あるいは、「AIの使い方がわからないので教えてください」という依頼。
AIを使えば5分でできることを、わざわざ人に頼むのですか?自分で学ぶ努力をしてください、という話です。
できない人は努力していない
こうした状況の根本にあるのは、「できない人が努力していない」という事実です。
本来であれば当人同士で解決すべき問題です。ただ、同じ役職の立場だと、なかなか指摘しづらいのも事実。だからこそ、マネジメント層の介入が必要になります。
マネジメント層の責任:業務の偏りを是正せよ
できる人が潰れるリスク
できる人に業務が集中している状態は、シンプルに言えば「その人が潰れる可能性を高めている」だけです。
これは組織にとって良い状態とは言えません。むしろ、最も避けるべきリスクです。
特定の人に依存している組織は、その人がいなくなった瞬間に機能不全に陥ります。退職、異動、病気…何が起きてもおかしくないのが会社という場所です。
マネジメントの本質的な役割
マネジメント職の役割は、組織全体のレベルアップです。できる人に業務を寄せることではありません。
もちろん、能力の差、才能の差、スキルの差は必ず存在します。だから、ある程度できる人に業務が寄るのは仕方ないことですし、責任のある役割をできる人が担うのは当然です。それが組織にとって最善だからです。
しかし、売上に直結するような重要業務でもなく、日常のルーティン業務を、ただただできる人にやらせているのであれば、それは組織にとって損失です。
具体的な介入方法
マネジメント層がすべきことは明確です。
- 業務の偏りを把握する:誰にどんな業務が集中しているかを可視化する
- 教育の場を作る:できない人にやり方を教える機会を設ける
- 責任を明確にする:「次からは自分たちでやってください」と宣言する
- フォローアップする:実際にできるようになったか確認する
私は部長職になったからこそ、「わかりました。ただ、毎回私に頼んでいたら業務が遅くなるので教えます。次回からはやってください」と言える立場になりました。
同じ役職だと難しいかもしれませんが、上の立場の人、特に管理職の人は、こうした介入をする責任があります。
できない人へのメッセージ:危機感を持つべき
業務が進んでいるように見えるだけ
もしあなたが「できない側」で、できる人に頼んでいる状態なら、はっきり言います。
業務が進んでいるように見えますが、それはあなたのおかげで進んでいるわけではありません。
あなたはできないままです。そして、ずっとできないままで、どんどん置いていかれます。
成長機会を自ら捨てている
できる人に頼むことは、一時的には楽かもしれません。でも、それは自分の成長機会を自ら捨てているのと同じです。
5年後、10年後、あなたはどんなキャリアを歩んでいたいですか?今のまま、人に頼り続けて、本当にそれが実現できると思いますか?
向上心のある人なら、今すぐ行動を変えるべきです。わからないことは学ぶ。できないことは練習する。時間がかかっても、自分でやり遂げる。
その積み重ねが、数年後のあなたを作ります。
まとめ:健全な組織とは何か
組織の理想的な姿
健全な組織とは、一部の人に依存しない組織です。
もちろん、能力差はあります。だからこそ、重要な判断や難易度の高い業務は、できる人が担当するべきです。
しかし、日常業務レベルでは、全員が一定のスキルを持ち、自律的に動ける状態が理想です。「あの人がいないと回らない」という状況は、一見すると「その人がすごい」ように見えますが、実際には「組織が脆弱」という証拠なのです。
同じ役職でも率先して動こう
管理職ではなくても、気づいた人が率先して動くべきです。
業務の偏りを見つけたら、声を上げる。できない人に教える機会を作る。自分ができることを増やし続ける。
こうした小さな行動の積み重ねが、組織全体を強くします。
できる人への業務集中は危険信号
最後にもう一度言います。
できる人に業務が偏っている状態は、組織として危険です。
- できる人が潰れるリスクが高まる
- できない人が成長する機会がなくなる
- 組織全体のスキルが向上しない
- 特定の人に依存する脆弱な体制になる
この状況を放置することは、組織の未来を危うくします。
マネジメント層の方は、今すぐ業務の偏りをチェックしてください。そして、適切な介入をしてください。
一般社員の方で「できる側」の方は、自分の成長は続けつつも、組織全体のことも考えてみてください。
そして「できない側」の方は、今この瞬間から、危機感を持ってください。人に頼り続ける限り、あなたの成長はありません。
この記事を読んだ1人でも多くの方が、組織の健全性について考えるきっかけとなり、職場での悩みが1つでも減れば筆者冥利に尽きます。
できる人もできない人も、そしてマネジメント層も、みんなが成長できる組織を作っていきましょう。それが、真に強い組織の姿です。
最後まで見ていただき、ありがとうございました!
