- 職場でズレている人の根本的な問題は「会社への帰属意識の低さ」であり、まずはこの意識改革が必要
- 毎月確実に給料が振り込まれるという安定性こそが、本来最大のモチベーションの源泉となるべき
- 「怒れない」「指摘できない」環境では、優秀な人ほど先に辞めてしまい、組織全体のパフォーマンスが低下する
- 効果的な対処法は明確なルールを設定し、徹底的にそれを守らせること
- 筆者の実体験では、残業に関する明確なルールを作ることで、問題のある社員の意識と行動が改善された
- ズレを指摘するのは優しさであり、組織の一員として当たり前にやるべきこと
職場で働いていると、必ずといっていいほど「なんだかズレている」と感じる人に出会います。チームの方向性と異なる発言をしたり、組織のルールを軽視したり、周囲の空気を読まない行動を取ったりする人たちです。そうした人たちに対して、多くの管理職や同僚は「どう対処すればいいのか」と頭を悩ませているのではないでしょうか。
私自身、大手ベンチャーの役職者として多くの社員と接してきた経験から、このような問題に直面することは決して珍しいことではありません。しかし、適切な対処を怠ると、優秀な人材の流出や組織全体のパフォーマンス低下を招く重大な問題となります。
根本的な問題:帰属意識の欠如
職場でズレている人の多くに共通するのは、会社への帰属意識の低さです。これは単なる性格の問題ではなく、組織人として必要な基本的な意識の問題なのです。
よく「会社がモチベーションを上げてくれない」「やりがいを感じられない」といった不満を口にする人がいますが、これ自体がズレた考え方だと私は考えています。なぜなら、会社は毎月決まった日に、成果が出ている出ていないに関わらず、確実に給料を振り込んでくれているからです。この安定性こそが、本来最大のモチベーションの源泉となるべきなのです。
「給料が安いから」という理由でモチベーションが上がらないという人もいますが、それならば給料が高い会社に転職するか、そのために自分自身が努力すればいいだけの話です。会社に対して「くれくれ精神」を持つのは、資本主義社会の基本的な原理からズレているのです。
入社時の初心を思い出させる重要性
ズレている人に対しては、まず入社時の状況を思い出してもらうことが効果的です。
新卒でも中途でも、その人は数ある求人の中から応募を決め、履歴書や職務経歴書を作成し、何度も面接を重ねてようやく入社にたどり着いたはずです。つまり、その人自身が「この会社で働きたい」「入社したい」と強く希望して、条件を見て入った会社なのです。
もちろん、入社前と入社後のギャップは誰もが感じるものです。しかし、重要なのは、この会社に希望して入り、毎日朝この会社に行く選択をしているのも、その人自身だということです。
このような事実を、ズレている人にはしっかりと伝えてあげることが大切です。これはパワハラではなく、客観的な事実なのです。
効果的な対処法:ルールの徹底
1. 明確なルール設定
ズレている人への対処法として最も効果的なのは、明確なルールを設定し、徹底的にそれを守らせることです。曖昧な基準や感情的な指摘では、相手に改善の必要性が伝わりません。
2. 言語化と文書化
ズレていると感じた点は、必ず言語化してまとめることから始めましょう。「なんとなく違和感がある」といった感覚的な判断ではなく、具体的にどこがどうズレているのかを明確にすることが重要です。
部下にしろ同僚にしろ、ズレを指摘してあげるのは優しさであり、組織の一員として当たり前にやるべきことです。もちろん、直接的な指導権限がない場合は、上司に相談するという形で組織全体の改善に貢献することも重要です。
「怒れない」ことが生む組織の問題
多くの管理職が「怒れない」「指摘できない」という悩みを抱えています。その理由は理解できますが、それによって「合わせる側」が疲弊しているなら、それはもう個人ではなくチーム全体の問題となります。
明確な指摘をせずに”察して対応”してもらえる環境があると、ズレた人はそのまま成長しません。一方で、周囲は「言えないストレス」を抱え、目標達成率や成果とは別のところで疲弊してしまいます。
結果的に、優秀な人ほど先に辞めてしまうというケースが多発します。これは組織にとって大きな損失です。
実践例:残業に関するルール化
私が実際に経験した事例をご紹介します。
ある男性社員が日報に「ボーナスが少ない分、残業代で稼ぎます」と書いていました。この社員は会社の中でも社歴が長い方だったため、その影響力も無視できませんでした。
私は以下の点を明確に指摘しました:
- あなたが思っている以上に、こういった日報に対して反感を覚える人が多いこと
- そういった意識で仕事をしていることが周囲に伝わって、逆にあなたの信用が下がっていること
- 評価者に当たる部長クラスも見ていて、プラスにはならない発言であること
さらに、口に出さないとしても、ルール化しないとこういった人たちが量産されるだけだと危機感を覚えたため、明確なルールを作りました:
残業ルール:
- 残業は40時間まで許可
- 40時間を超える場合は原則残業禁止
- 終わらない場合は業務内容を強制的に減らす
- その上での評価を行う
このルールを導入した結果、この社員はルールの範囲内で業務に励むようになり、日報にマイナスなことを書くことがなくなりました。客観的に自分を見れるようになったのでしょう。
具体的な実践ステップ
ステップ1:問題の具体化
- どの行動がズレているかを明確にする
- 具体的な事例を記録する
- 周囲への影響を整理する
ステップ2:ルール設定
- 明確で測定可能な基準を作る
- 例外を設けない
- 違反した場合の対処法を決める
ステップ3:継続的な管理
- 定期的にルールの遵守状況を確認する
- 改善が見られない場合は段階的に対処を厳しくする
- 改善が見られた場合は適切に評価する
組織全体への波及効果
適切にルールを設定し、ズレている人への対処を行うことで、組織全体に以下の効果が生まれます:
- 明確な基準の共有:何が求められているかが全員に伝わる
- 公平性の確保:誰にでも同じルールが適用される
- 優秀な人材の定着:ストレスの少ない環境で働ける
- 組織の生産性向上:無駄な調整作業が減る
まとめ:優しさとしての厳しさ
職場でズレている人への対処は、決して相手を攻撃することではありません。むしろ、その人が組織の一員として成長し、周囲との良好な関係を築けるようにサポートすることが目的です。
明確なルールを設定し、それを徹底的に守らせることは、本人のためでもあり、組織のためでもあります。「優しさ」とは時に厳しさを含むものであり、適切な指摘と指導こそが、真の意味での部下や同僚への配慮なのです。
職場でズレている人に困っている管理職や同僚の方々は、感情的になったり諦めたりするのではなく、冷静にルールを整備し、継続的に改善を促していくことをお勧めします。立場に関係なく、組織の一員として建設的な解決に向けて行動することが大切です。それが結果的に、全員がより働きやすい職場環境を作ることにつながるのです。
この記事を読んだ1人でも多くの方が、職場でのズレている人への対処法を実践し、組織全体がより良い方向に向かうきっかけとなれば幸いです。皆さんの職場での悩みが1つでも減れば筆者冥利に尽きます。最後まで見ていただき、ありがとうございました!